新型コロナウイルスへの感染拡大に伴って世界の経済活動は急速に縮小している。5月に発表される日本の2020年1~3月期の実質GDP(国内総生産)はマイナス成長となることが確実だが、世界の感染拡大が続けば4~6月期もさらに大きく落ち込むだろう。世界経済も日本経済も2008年に起きたリーマン・ショックを上回る厳しい景気後退に陥りつつあるのは、誰の目にも明らかだ。
経済の落ち込みを防ぐべく、日本を含めて主要先進国は大規模な景気刺激策を実施しようとしている。しかし、これだけで経済を拡大軌道に戻すことは不可能だ。安倍首相が3月28日の記者会見で、闘いは「長期戦を覚悟していただく必要がある」と述べたように、対策も長期を前提に用意すべきだ。経済活動を止めている中では、大規模な需要喚起策を打ち出しても呼び水となる効果は期待できない。感染が収まるまでをどう耐えるのか、その方策が必要だ。
医療機器や用品、人材の手当てに政府が関与を
今回は感染への対応が最大の景気対策であることは言うまでもない。感染者が急増した欧米では、医療用の設備や機器、医療用品、人材など、医療の現場ではあらゆるものが不足して悲鳴が上がっている。日本でも感染者が増えれば同じような状況に陥るおそれが大きい。
経済が正常に動いているときには、多くの企業や消費者が自由に取引を行う市場に任せることで、最も効率的に生産・流通・消費が行われる。政府は理由なく民間の経済活動に介入すべきではないと、経済学の教科書は教えている。しかし、今は財政・金融政策を使って経済活動の水準を調整するというマクロの政策が求められているだけではなく、分野によってはミクロの企業の生産活動や生産物の配分にも政府が積極的に関与すべきときである。
医療機関にそれぞれの資金で設備や機器を調達させることは難しい。資金調達がネックになったり、投資負担が先行きの経営を圧迫することを懸念したりして、整備が迅速に進まないことが予想される。医療設備や機器の生産を行う企業についても同様だ。現下の感染拡大に合わせて人工呼吸器のような医療機器や病床を増やすと、問題が終息すれば需要は消滅してしまうからだ。
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