需要の減少に直面している飲食店や娯楽産業、航空、宿泊などの産業を支援するためには、需要喚起という間接的な方法よりも、資金調達の支援や休業中の損失補填など直接的な援助のほうがコストも低く効果的である。ホテルや百貨店などは、もともと国内需要が伸び悩んでいるために、海外からの旅行客によるインバウンド需要に大きく依存していたのだから、国内需要を喚起して海外からの需要の落ち込みを埋めることは難しい。
企業の資金繰り支援には、民間金融機関の体力低下という問題もある。金融機関と資金を借りる企業とが長期的な関係を維持してきた日本では、昔は企業の収益が大幅に悪化したり資金繰りが困難になったりした場合に、金融機関が自らのリスクで支援することがしばしばあった。
しかし、超低金利政策による景気刺激を行ってきたことと引き換えに、わが国の金融機関の体力は低下している。このため、弱っている企業を支えるためにリスクをとる余力は落ちている。したがって、企業の資金繰り対策に公的金融機関の利用、政府による債務保証が必須である。感染が終息した後に経済活動を円滑に再開することを考えるなら、対象企業によっては一時的な国有化も検討されるべきだ。
必要な人に的を絞って長期の支援を
企業に対する資金繰り支援や休業補償で雇用を維持することは重要だが、これだけではフリーターやパートタイム労働者、自営業者などセーフティーネットから漏れてしまう人たちが大量に発生してしまう。家計への現金給付は一般的で一時的な消費喚起ではなく、大きく収入が減少した人たちの生活を支えることを目的として問題が改善するまで長期戦の覚悟で行うべきだ。
WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長はワクチンの開発にはまだ1年から1年半の時間がかかると発言しており、治療薬もいつ見つかるか予測は難しく、残念ながらわれわれは長期戦を覚悟する必要がある。政府は緊急対策の策定と同時に、問題が長期化する場合への準備を早急に進めるべきである。
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