医療体制が壊れてからでは遅い
――3月19日の専門家会議の提言では、オーバーシュートが始まっていたとしても、気づいたときには制御できず、ヨーロッパのような医療提供体制が崩壊状態に陥るとされています。日本でも、イタリアのような医療崩壊が起こり得るのでしょうか。
いま、日本は爆発的な感染には至っておらず、なんとか持ち応えている状態だ。しかし、想像以上に欧米、特にイタリア、フランスの状況が悪化している。入国制限をかけたとしても鎖国しているわけではないので、今までのように特定の感染ルートに注意するだけでは対策は間に合わなくなってくる。
2009年の新型インフルエンザ流行時は、外来に長蛇の列ができるなど医療機関が混雑したが、医療崩壊は起こらず、通常のプラスアルファ程度で収束した。今回の患者数は新型インフルエンザより圧倒的に少ないため、すぐに医療崩壊は起こり得ないだろう。しかし、流行拡大がくすぶっている状態で、手をこまぬいて待つわけにはいかない。医療体制が壊れてからでは遅く、まだ粘っているうちに対策を打つべきだ。
今の医療体制では、PCR検査で陽性ならば、元気な人でも感染症の指定病院のようないわゆる「大きくていい病院」に入院してしまう。感染症法では、入院治療の必要のない軽症者も含めて措置入院(強制的な入院)の対象にしているからだ。しかし、これでは重症者が病院に入院できなくなる。軽症者や無症状の陽性者を、高度医療を行う医療機関(の入院対象)から外せるようなシステムを作らなければならない。