今なら日本の「医療崩壊」は食い止められる 岡部信彦・川崎市健康安全研究所長の提言

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――PCR検査は保険適用されたことで今後、検査件数は増えるのでしょうか。

精度と速さを求めなければ、(検査の)数をこなすことはできる。当研究所では、朝持ってきた検体はその日の夕方に結果を出せるが、検査件数が増えれば、重症者など肝心な人の検査結果が遅くなる。つまり、「心配だから検査をしてください」ということをやっていたら、検査全体のスピードが低下する。

PCR検査は、精度や安全性が担保された民間検査会社や医系大学に協力してもらう仕組みがすでにできている。だが、新型コロナウイルス感染症は指定感染症のため、検体を運ぶには容器に入れた検体が万一でも外に漏れないように三重に包装をする。空路を使ってはいけないなどの厳重なルールがある。輸送中に盗まれるなど、テロを想定した法律上の仕組みができているからだ。こうしたルールの枠をある程度外していくことで、多くの施設で検査が可能になる。

臨床ではまだ承認されていないが、抗原反応による検査(イムノクロマト法)という簡便な検査も使えれば、精度はPCRに及ばないものの、臨床の現場で答え(結果)が出るようになるだろう。

集団免疫効果はまだよくわからない

――免疫を持つ人が増えることで流行を阻止する「集団免疫効果」は期待できるのでしょうか。

もちろん期待したいが、免疫の効果は現時点でわからない。下痢症状が出るロタウイルスなどは、初感染(最初に感染した時)が一番重くなり、何度かかかっているうちに軽くなる。またデング熱のように、一度感染して抗体ができると2回目はむしろ重症化しやすい感染症もある。

感染症は、すべてが「二度かからない病」というわけではなく、「1回かかれば大丈夫です」とは簡単には言えない。

――新型コロナ特別措置法が改定されました。緊急事態宣言は必要ですか。

私は、新型インフルエンザ流行時の特措法を取りまとめる委員長を務めていた。この法律は想定以上の緊急事態を考えれば、あった方がいい。特に自治体は法律に基づいていろいろなことを行うため、緊急事態宣言を出せば、かなり強い行政的対応ができるようになる。

しかし、この法律はよほど重い病気や広がりやすい病気を想定しているので、乱発されては困る。政治的判断だけで宣言できないように、医学を中心に社会や経済面へのインパクトを考える専門家の意見を聞くことになっている。また全国一斉にではなく、各自治体がその実情を判断して行うことになる。

この病気が特措法を持ち出さなければいけないほどの病気かどうかは、今でも疑問が残る。だが、新しい病気であり、世界全体が非常に危険な病気という意識で動いているため、日本だけが何もしないというわけにはいかないだろう。社会的なインパクトの強い病気になってきた。

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