横浜市より人口増加率高い「神奈川の町」の変化 住民も認める「特徴のない町」で何が起きたか

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那覇市に隣接する南風原町は人口3万9172人(2019年1月1日現在)、沖縄県で唯一海に面していない自治体である。日本人人口に限ると、全国で19番目に人口の多い町だ。初期のウルトラマンシリーズの脚本を手がけた脚本家・金城哲夫氏の出身地でもある。

那覇市のベッドタウンとして成長し、人口増加が続く沖縄県を象徴する人口増加町となっている。1989年に約2万7000人(総計)だった人口は、ほぼ右肩上がりに増え続け平成の30年間で1万2000人以上増え、約1.44倍に膨れ上がった。

ここ3年間の増加状況は、635人、561人、731人。2018年中の増加数731人は、町村では全国トップ。興味深いのはその内訳。自然増加数344人は町村で全国1位、同増加率0.89は全国3位。そして社会増加数387人も町村で全国3位と、ともに上位にランクインしている(すべて日本人住民に限る)。

ベッドタウン化が進むなかで移り住んできた人々がこの地に定着して子どもが生まれている。そして新たな流入者も増えている。過疎に悩む自治体からすれば、なんともうらやましい理想形となっているのだ。

インフラ整備の進展

人口増加の背景には、平成以降に進めた津嘉山北地区などの区画整理による戸建て、アパートなどの増加、大型商業施設や那覇空港につながる那覇空港自動車道(高規格幹線道路)の開通(町内に2カ所のインターチェンジ)といったインフラ整備の進展がある。

住民サービスでは中学3年までのこども医療費の窓口支払い無償化や、待機児童解消に向けた法人保育園の開設などに力を入れている。町内の認可保育施設(町立、法人、私立)は、2020年4月開園予定の保育園を含め21。しかし、それでも急増する人口に対応しきれていない。

厚生労働省の調査によると、2019年4月1日時点で、南風原町の保育所など利用児童数は156人増加した(定員数は144人増)。その一方で、待機児童数は全国9位で、まだ208人もいる(前年比14人増)。待機児童率は9.92%(申込者数2096人)。急激な人口増加が続く自治体の大きな課題である。

人口減に悩む自治体は多い。「まち・ひと・しごと創生法」の成立後、全国のほぼすべての自治体が「市町村版総合戦略」を策定し、将来人口の設定などを行っている。問題はその戦略に自治体独自の哲学やビジョンが盛り込まれているのかどうか。

外部コンサルタントに丸投げして策定しているだけでは、活性化につながるようなアイデアも行動も期待できない。今回紹介した知夫村、開成町、南風原町もそれぞれ課題を抱えながら、住民の声を取り入れて独自のまちづくり、むらづくりを進めていた。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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