横浜市より人口増加率高い「神奈川の町」の変化 住民も認める「特徴のない町」で何が起きたか
ところが、そんな知名度もなく目立たない町だったにもかかわらず、企業誘致や昭和50年代からの土地区画整理など、まちづくり事業を地道に行ってきた結果、1955年の町制施行時に4633人(総計)だった人口は、2019年(1月1日時点)には1万7612人と4倍近くに膨れ上がった。
2016年からの3年間をみても毎年252人、190人、272人と増え続けている。2018年の1年間では社会増加数が272人で、町村部門で全国8位となっている。人口増加率1.57は横浜市や川崎市を抜き、神奈川県の市町村でナンバー1だ(総務省調査より)。
この町の1番の変革は、町制60周年を迎えた2015年に行った「まちのブランド化」だった。当時の広報誌に府川裕一町長とブランディングに携わったデザイナー、コピーライターの対談が載っている。ブランディングにかける町長の思いがこんな発言に表れている。
「開成町をもっともっと元気にしていくためには、町民の方に『住み続けたい』、町外の方に『住みたい』、『訪れたい』と思っていただく必要があります。そのためには『町の魅力』と『町の認知度』を高め、さらには『町の愛着や誇り』を醸成する必要があると考えました」[広報かいせい平成27(2015)年2月号]
コンセプトは「田舎モダン」
町民に愛され、住み続けてもらう、町外の人たちを引き寄せるためのブランディング。神奈川でいちばん小さな町が行ったブランディング事業はどんな内容だったのだろうか。
ブランディングにあたってのコンセプトは「田舎モダン」を採用した。都心からの絶妙な距離感、自然あふれるのどかな風景の中でほどよい田舎の雰囲気を楽しむライフスタイル、そんな開成町ならではのよさを「田舎モダン」という表現に込めた。町の認知度を高めるためにロゴマークも一新した。4枚の花びらの色が「げんき」「うるおい」「きもちよさ」「いやし」といった田舎モダンな魅力を表現するアジサイの花をモチーフにしたデザインだ。
翌2016年、町は前年度に取り組んだプロモーションの集大成となる「プロモーションブック」を制作した。B5サイズフルカラー100ページの『かいせいびより』という写真集で、86点の写真を厳選して掲載した。街の風景、人々の表情を通じて開成町の魅力が伝わる1冊だ。一方で、町の公式マスコットキャラクター「あじさいちゃん」は町のイメージづくりに大活躍。Facebookで町のイベントを逐次紹介するなど情報発信役を務めている。
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