異色のご意見箱システム
――部屋数が合計で135室と多くない割に、客室タイプは13種類と多岐にわたっていますね。駅前立地のビジネスホテルとしても、珍しいのではないでしょうか。
お客様が望む旅のスタイルが多様である以上、われわれの客室タイプも多様であるべきで、スタンダードシングルからスイートまでご用意しています。さらに言うと、部屋のタイプだけではなくて、いろいろなアメニティ(備品)をお客様自身が選んでコーディネートできるのです。
Dell(デル)コンピュータの「build to order」の考え方です。客室というベースメントにアメニティのパーツを組み合わせていって、自分が必要なaccommodation(宿泊施設)をコーディネートする、というのが基本思想です。
――先ほど拝見した部屋にも、アイロンが追加で置いてありました。
プラスアルファですね。われわれはCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)をつねに重要視し、お客様が利用した軌跡を追っています。そして、たとえば次に宿泊されるときには、そのお客様が必要とするアメニティが必ず準備されています。ラグジュアリーホテルではスペシャリストたちがゲストリレーションでやっていますが、われわれはシステムを使ってやっています。
――具体的には、接客スタッフは何をしているのですか?
VOC(ボイス・オブ・カスタマー)という活動をしています。「VOCカード」をスタッフ全員が携帯していて、お客様の声なき声を拾うことを重要視しています。
――声なき声、ですか。
たとえば、お客様のちょっとしたしぐさだとか、ちょっとしたコメントを各スタッフが観察し、気づきとしてメモを取っておきます。時間が経つとなかなか思い出せないので、気づいたその場で書いて、全館の要所、要所に設置しているVOCボックス(ご意見箱)に投函しておきます。
客室メークの担当者には、「刑事のように、お客様の使用した後を観察しなさい」と言っています。たとえば、机の上の備品が横にざっとよけられているケースが多かったら、確実にお客様にご不便をかけているのが見てとれますので、次の改善行動に生かしていきます。
月に1回、内部品質向上委員会を設けています。各セクションのリーダークラスと私が必ず参加して、改善すべきことは即決します。次のターム(客の来訪)では確実に、何かしら改善行動がなされていきます。
――直接お客様に聞くのではないのですね。
もちろん、アンケートで拾うケースもあります。たとえば「支配人レター」に「冬は加湿器が欲しい」と書かれていた場合。加湿器は現在、半分の部屋には常設していて、残りの部屋には貸し出ししているのですが、「加湿器が欲しい」というその要望をされたお客様が次に来るときには、必ずセッティングしておきます。
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