薬物乱用頭痛とは、簡単に言うと頭痛を改善するために服用する薬の回数や量、期間が徐々に増えていき、逆に脳が痛みに敏感になって頭痛の頻度が増え、薬の効果も悪くなる悪循環に陥ったもの。これはドラッグストアなどで販売されている一般用医薬品の頭痛薬などでも起こる現象で、薬物依存の一種として一部で社会問題化もしている。
このような危険もある中で、依存性があるデパス(エチゾラム)が含まれる処方を片頭痛で使うことに疑問を感じざるをえないという。さらに吉田氏は「そもそも薬理学的に見ても片頭痛にデパスを使う意味がわからない」と語る。
「不安や不眠でデパスを服用している患者さんは、デパスの依存性についても一定の認識があることも少なくありません。しかし、片頭痛で処方された複数の薬剤の中にデパスが交じっているような患者さんでは、そうした依存性の認識はまったくないことが多く、知らぬ間に依存になってしまう危険性があるのです」
吉田氏は現在の薬局を経営するようになってからも時折、この片頭痛でデパス(エチゾラム)の処方を受ける患者を見かけることがある。中には薬物乱用頭痛に至っている可能性が高い患者もおり、その可能性を伝え専門の頭痛外来の存在を伝えるなど対処しているという。
利点の多いデパス「気軽」な処方への疑い
薬剤師への取材からは、デパス(エチゾラム)の依存・乱用が起きた背景として、2016年に向精神薬の指定を受けるまで、「広い適応」「長く処方できる」などの利点があり、それゆえにいわば「気軽」な処方、時には薬理学的に考えて意味が不明な処方が行われたのではないか?という疑いが見えてきた。
そして向精神薬の指定後、そうした「気軽」な処方は減りつつあるものの、すでに長年デパス(エチゾラム)を服用し続けてきた高齢者の常用量依存が問題化しているとの指摘もあった。
次回は、デパス(エチゾラム)の問題を医師がどのように見ているのかを追う。
(取材・執筆:村上 和巳/ジャーナリスト)
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(第4回に続く)
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