早稲田大学の隠れた“含み損”80億円、波紋を呼ぶ決算処理

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 有価証券の時価情報には「時価のない有価証券」として329億円が計上されているが、この計上額には複合金融商品残高約219億円が含まれている。証券会社などの提示する「参考価格」で試算すると、その合計額は約138億円になる。しかし、「この『参考価格』は満期保有目的を前提とした場合の『合理的に算定された価額』とするには相応しくないと判断されるため、当該複合金融商品残高を時価のない有価証券に含めて表示している」。

複合金融商品の内容は「いわゆる仕組み債で為替リスクを取りに行くものがほとんど」(早稲田大財務部)。その仕組み債については、時価評価をしなかったということだ。

ちなみに、時価のない有価証券には不動産証券化商品約72億円が含まれ、こちらの参考価格は195億円となっている。

有価証券の時価については、市場価格があればそれを使う。市場価格がない場合には「合理的に算定された価額」を使うことになっている。ただし、複雑な仕組み債などは、大学が独自に時価を算定するのはほぼ不可能。証券会社などに参考価格を出してもらい、それをもって時価評価するのが一般的だ。

早稲田の言い分はこうだ。「証券会社などが出す『参考価格』は、時価ではない。一定の前提に基づいて計算した文字どおり参考の価格でしかなく、しかも、今すぐ売却する場合の投げ売り価格。とても、合理的な時価とはいえない」(同大財務部)。

証券会社が当てにならないのなら、大学が独自に「合理的な時価」を算出して評価すればよいはずだが、「それは困難」(同)。だから、時価がないので時価評価しない、簿価と参考価格との差である80億円も含み損ではない、というわけだ。

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