早稲田大学の隠れた“含み損”80億円、波紋を呼ぶ決算処理
それで許されるのか--。他の大学から驚きの声が上がったのが、早稲田大学の2008年度決算だ。
資産運用に積極的だった大学の一部では、金融危機の影響で有価証券評価損やデリバティブ運用損の計上を余儀なくされた。さらに、財務諸表に反映しない分についても、貸借対照表の注記で「有価証券の時価情報」と「デリバティブ取引」を開示することになっている。その注記によれば、有価証券やデリバティブ取引で大きな含み損を抱えている大学も少なくない。169億円の有価証券評価損を計上した慶應義塾大学では、含み損も合計で365億円に上る(3ページ目表■主な大学の含み損参照)。
「有価証券の評価については、監査法人のスタンスが今回、とても厳しかった」と語るのは、中堅私立大学の財務担当者だ。
学校法人会計基準では、有価証券は原則として取得価額により計上される。ただし、時価が著しく下落した場合は、回復が可能と認められる場合を除いて、時価評価による減損処理が必要になる。
日本公認会計士協会は今年3月2日付で、「学校法人監査における監査人の対応について」(業務本部審理情報)を公表した。簡単にいえば、きちんと有価証券の評価減がなされているか、評価減まで至らない場合には時価情報で適切に注記されているかを厳しくチェックしなさい、ということだ。
その背景に、金融危機による有価証券の大幅な時価下落があったことはいうまでもない。近年、資産運用を積極化する大学が増えているが、ハイリターンの商品であればあるほど、それだけリスクも高くなる。そのマイナス面が出たのが、まさに08年度決算だった。
「参考価格」は非合理的と時価情報にも掲載せず
早稲田大の決算を見ると、「有価証券の時価情報」の注記に、さらに注が付けられている。その内容はこうだ。