建物の中に道路をつくる、または道路の周りに建物をつくることの面白さ、難しさを東京の寒さとともに味わった一日であった。しかし、難しさの最大のものは、技術でも工期でもないところにあると、今日の取材でお目にかかったある方から聞いた。
「建築と土木は、仲が良くないですから」
あ、やっぱりそうなんですね、というのが率直な感想だ。門外漢からすると似たようなジャンル同士が敵対関係にあるのは良くあること。天文と宇宙、精神医学と心理学などと、こうやって並べるだけで「同列に扱わないでほしい」という声が聞こえてきそうである。
ビル建設すなわち建築と、道路建設すなわち土木は似て非なるもの。仕様書も違えば同じ言葉が指すものも違い、役所の管理部署も違ううえ、建築と土木の間にはリアルな境界もしっかりあって、工事の際にはその境界線を互いに越えないようにするのだそうだ。
立体道路となるとその境界は3次元化し、結界が発生する。その結界は、人や重機や資材には厳密に適用されるが、音や振動は易々と乗り越えようとするので、人は知恵を絞るのだ。虎ノ門は、国の予算を食いつぶす白蟻の巣ではなかった。いかにも人間らしい物語の現場だ。しみじみとした気持ちでヘルメットを脱ぎ、現場を後にする。虎ノ門ヒルズは2014年内に完成の予定だ。
虎ノ門ヒルズはデザインもおもしろい
その虎ノ門ヒルズは、新橋側から見ると中層から低層にかけて、ナイフで削がれたようなデザインになっていて、削がれた空間に小さな塔が建っている。トンネルの排気塔だ。トンネル内の排気ガスが、ここから外に排出されるのだ。
もちろん、排出前には集じん機で処理されるので、露天の道路よりも、ずっとキレイな空気になるという。ここではいわゆる「PM2.5」の心配はない。このデザインは、建築と土木の共存と、日本品質の高さの証なのである。そんなことを考えながら、いよいよ雪が激しくなりつつある現場を後にした。
(構成:片瀬京子 撮影:尾形文繁)
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