トンネルの虎ノ門側の出入り口は虎ノ門ヒルズから見ると西にある。そこから中へ入る。果たして、トンネルの側もビルに気を使っていた。トンネル入り口には付近には吸音板を、ビルに肉薄する部分では、壁や天井に耐火板を張り巡らせている。ビルへの影響を最低限に抑えるためだ。
このトンネルは現在、設備工事の段階に入っている。カーブの視認性を高める壁の塗装などは済んでいる。LEDのライトも非常口案内板も設置済みだ。いつも思うのは、こういう現場の美しさである。チリひとつないという印象だ。作業員が乗ってきたと思われる車が監査歩廊の脇に停まっているが、タイヤの下にはベニヤ板が敷かれている。持参したハンカチの上にカバンを置く営業マンのようでいかにも日本的であり、これこそが日本品質なのだと誇らしくなる。
少し歩くと、視線の先に光が見えた。ご案内の東京都第一建設事務所環二工事課長の菅谷正志さんによると、約900メートル先のところにある新橋四丁目のランプ(第一京浜との連結路)だという。
築地虎ノ門トンネルは全長1.84キロ。今日あたりはトンネルを抜けても雪国だろう。このトンネルのうち虎ノ門から新橋までの区間は、3月中にも交通開放される予定だ。戦後なかなか実現しなかった道路がついに、地下深くに完成する。車で走れば2、3分の距離だ。草葉の陰で徳川家康公とマッカーサー元帥は何を思うのだろうか。
トンネルは昔から大人気。まさかの開通前イベント?
トンネルの中央部分に、白い大きな金属の箱が置かれていて、数人が作業している。何だろうと回り込んで見てみると、行き先表示板だった。トンネルでは天井から吊られていることが多い、あれである。
でかい。下から見ていて、こんなにでかいものとは知らなかった。行き先として五反田とか溜池とか書いてあるが、たとえば田の字は30センチ四方くらいある。この看板は開通後、虎ノ門の出口を出る少し前で見られる。しかしそれを皆様が見られるのは、交通開放後、すなわち車が通れるようになってからだ。人が歩けるようなチャンスはないのだろうか。
そういえばかつて、こんなことがあった。日産自動車が、GT-Rの新モデル発表会を完成直後の山手トンネルで行ったことがある。記者やカメラマンが押しかけて、大盛況だったそうだ。ただし、発表された新車に関心があったのはそのうち3割。あとの7割は、トンネルを見たかったらしい。
何が言いたいかというと、トンネルは大人気なのだ。ここでももしかすると交通開放前に、一般の人が歩けるようなイベントがあるのではないか(念のため申し添えると、東京都の方はそうは言っていない。しかしそんな予感がするという、ボクの勘を述べているまでだ)。
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