「決算!忠臣蔵」原作者が語る浪士の経済事情 討ち入りは思った以上に費用がかかっている

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――「忠臣蔵」を語るのにこういう切り口があったのかと思いました。

やはり「忠臣蔵」全体をお金で語るというのは新機軸だと思いますね。一時期は『最後の忠臣蔵』や『四十七人の刺客』のように、周辺部分に焦点をあてて「忠臣蔵」を描こうという機運がありましたが、こういう形でも描けるということですね。

山本博文(やまもと・ひろふみ)/1957年岡山県生まれ。歴史学者。東京大学大学院修了。東京大学史料編纂所教授。『江戸お留守居役の日記』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。主な著書に『島津義弘の賭け』『歴史をつかむ技法』『格差と序列の日本史』など (筆者撮影)

――当時、そば1杯が16文。現代のレートで480円とのことで。これを基準に当時のものの価値を計っていたのがわかりやすいなと思ったのですが。

経済の指標の1つに(マクドナルドで販売されているビッグマック1個の価格から世界各国の物価水準を測る)ビッグマック指数というのがあるのを知って、それなら「そば」にしようと思ったんです。そばは物価の優等生なので、実質的な値段は現代とほぼ同じなんです。だからそばを基準にすればほかのものも換算できるんじゃないかという発想です。

――古文書の類のものは、借金の証文といったものが多いと聞いたことがあるのですが、やはりお金絡みの古文書は多いのでしょうか。

多いといえば多いです。中世ぐらいの、あまり史料が残ってない時代では、史料の多くが自分の権利を保障するものなんです。この土地をもらったとか、何か褒美をもらったとか。それがだんだん江戸時代になると、借金の証文や領収書といった類の史料がたくさん残るようになっています。

関ヶ原の戦いのお金事情に注目

――今回はお金からどういう行動をしていたかという視点だったと思うんですけれども、やっぱりそういうお金的なものから、やっぱりその当時の生活とかも見えてくるもんですか。

見えてきますね。しかもこの史料のいいのは、金と銀と銭を使っているわけですよね。さらに、史料では、交換比率なんかも大石がきちんと書いてるので、計算しやすかったです。

――山本先生は江戸時代の研究をずっとやられていますが、どういったところにひかれたのでしょうか。

豊臣時代から江戸時代における武士の研究というのが1つのテーマです。武士道とか、そういうものも研究しています。この「忠臣蔵」というのは、武士のメンタリティーを示す1番いい素材なんです。だからこういうことをやっているということです。

――先生が今ここに注目してる分野、事件などはありますか。

こういうふうにお金に注目するとなかなか面白いので、お金にこだわって調べたいなと思っています。例えば関ヶ原の合戦のお金事情はどうかと思っています。意外と史料が残ってるんです。もちろんすべてはわからないですけどね。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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