17歳少女が「知らない中年男性」と同居する事情 自分勝手な母親に人生を滅茶苦茶にされた

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百合奈さんの母親はどうだったのか。

「実の父親はいないし、父親からの愛情みたいなことがわからなかったので、母親の男性関係はあまり気になりませんでした。正直、次々です。また新しい男の人がいるなって感覚で、今回は妊娠してしまったので離婚、これから再婚ですけど、それまでも、お母さんが義父がいないときに自宅に男性を連れ込むのは日常でした。だから家に男の人がいるのは慣れていました」

自宅に男性を呼ぶときは、「部屋から出るな」と言われる。義父が働きに出ている平日の昼間、夜から深夜にかけてが多かった。彼女が高校生になってからは夫婦間に亀裂が入っていたのか、義父がいるときでもさまざまな男性を自宅に連れ込んでいた。

妻が男性を自宅に連れ込み、また朝帰りが繰り返され、義父のストレスは日々大きくなった。母親がいない家は彼女と2人の子どもである妹、そして義父である。義父のいら立ちは百合奈さんに向かった。

救う道はあるのか…

「虐待がひどい時期もありました。お母さんが帰ってこない時期は、ファイルの角でよく殴られた。硬いのですごく痛い。地元の合唱団に入っていて、楽譜のファイルがあって。

そこに通うためにお父さんに送り迎えを頼んでいたんです。帰り道、すごくイライラして殴られる。なんか怒鳴られて、殴られる。昔怒られたようなことを引っ張り出して殴られる。痛いです。家の手伝いをしないとか、俺が思っていることをしないとか。気が利かない、役立たずみたいな」

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彼女は母親の苗字が変わっても、まだ父親の苗字を名乗る。それはすごく嫌なことの1つだという。

「同じ苗字でいるのは嫌です。虐待のことは誰にも言えなかったし、この人がいるから今学校に通えているってこともわかっていた。だから、何をされても反応しなかった。どんなに痛くても、泣くこともしなかった。我慢です。妹がいたので。恥ずかしいところを見せたくなかった。

でも、耐えられなくてリストカットとか癖ついちゃった時期があって、さすがにこのままだとダメになっちゃうと思って、スクールカウンセラーに相談したこともあった。でも、精神科は保護者と一緒じゃないと行けない。だから受診はできませんでした」

このまま中年男性との暮らしを続けるのか――。もう1度、生活を立て直すのに何が必要なのか。

福祉や制度から放り出されている彼女の厳しい境遇は、これからの日本で勃発しまくるだろう事態であり、看過できない。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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