「母の叱責」で精神病発症した彼女の壮絶人生 中学生の頃は毎日死ぬことばかり考えていた

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石田さんは母親の虐待の影響で死にたくなるトラウマがあるという(編集部撮影)
この連載では、女性、とくに単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、「中学生の頃から母親に心理的な虐待を受けて育ちました」と編集部にメールをくれた大阪府在住の32歳の女性だ。

大阪市内の福祉施設に勤務する石田美央さん(仮名、32歳)と、天王寺で待ち合わせた。浮かない表情でやってきて、すぐに話は始まった。精神疾患があるようだ。

1年前に中学時代から抱える精神疾患が悪化し、職場の雇用を正規から非正規に転換。介護福祉の賃金は64業種中64位(参考記事:最新版!40歳年収「64業界別」ランキング)である。元々、低賃金だった収入はさらに半分以下になり、1人暮らしの生活が維持できなくなった。現在は実家で暮らしている。

大阪市は貧困が深刻な地域だ。生活保護率が全国1位、就学援助を受ける小中学生は4人に1人を超えている。

母の虐待の影響で、希死念慮に襲われるように

「母の虐待の影響でトラウマがあります。症状が悪化すると、希死念慮がすごくなる。自分でも怖いくらい、本当にすごくて、線路とか見ると飛び込みたくなってしまいます」

深刻な語りが始まった。口調は喜怒哀楽があまりない。自分の病状や症状を理解して、冷静に伝えてくれる。

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「歩いていると高い建物とかあるじゃないですか。衝動的に最上階に行って飛び降りたくなったり。だから、なるべく高いところに行かないように気をつけたりとか。死にたくなると本当に死にたくなる。だから死にたいのを我慢したりとか、いつも大変です」

1年前、いつものように福祉施設で働いていた。相談職なので介護だけでなく、利用者家族やキーパーソンと頻繁に連絡をとって、ケアプランを立てたり、アセスメントする。いつもと変わらぬ日々だったが、ミスをして上司に強い口調で叱責されたことがきっかけで、強い希死念慮に襲われた。本当に心から死にたくなった。

「希死念慮はおさまっても、また出てくる。その繰り返し。怖くなって主治医のところに行ったら、即入院になりました。それからどうしても仕事がうまくこなせない。事務の処理が遅くなって、利用者さんと会話できなくなったり。頭の回転が遅くなりました」

常勤は無理と判断され、シフトを減らされて非常勤に転換となった。週3~4日勤務で時給1000円、年収は100万円をちょっと超える程度。賃金は正規雇用のときから6割減となった。

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