石田さんは福祉大学を卒業し、社会福祉士など、複数の国家資格を複数所持する。介護現場ではエリート層だが、非正規となった瞬間に最低賃金に近い賃金となった。貧困だ。障害年金に支えられ、なんとか最低限の生活を維持している。
手取り8万円程度の就労収入、月6万5000円程度の障害年金では1人暮らしを支えられない。現在、単身女性の3人に1人が貧困といわれている。可処分所得がおおよそ年間120万円以下で相対的貧困に該当となる。
現在の収入を見てみよう。収入(就労8万円+障害年金6万5000円-家賃5万円=可処分所得9万5000円)で貧困状態である。奨学金の返済も残り、どんな節約してもお金が足りなくなった。“ちゃんと働いても貧困”というのは、平成以降の女性の貧困の典型である。石田さんのような低賃金に苦しむ女性は、本当に全国にあふれている。
苦しいながら家賃を払って暮らしたが、食べる物にも困る困窮状態となった。実家に戻った。現在、職場と実家を行き来するだけの生活を送る。お金がないので遊びに行くこともなく、友達も少ない。異性と出会うキッカケはなにもないので、32歳になっても未婚のままだ。
明るい未来は頭の中に一切なかった
「結婚とか出産とか、もうずっと前に諦めています。福祉の仕事も同じ日常の繰り返しで、たぶん将来的にもずっと低賃金。もう、自分が生きるだけでいっぱいいっぱい。いろいろ諦めるしかないですよね」
結婚出産どころか、恋愛も諦め、福祉の現場仕事も低賃金労働の繰り返しでしかない。明るい未来は頭の中に一切なかった。いったいなにがあったのか、詳しく聞いていこう。
実家は大阪市内、小学校までは家庭は平穏だった。先ほど精神疾患になった理由は「母親の虐待」といっていた。母親がおかしくなったのは、小学校6年のとき。大黒柱だった父親の勤めていた会社が倒産してから。
「会社が倒産して、父親がサラリーマンじゃなくなった。自営業で仕事をするようになって、すごく収入が減ったんです。それで母親がおかしくなりました。収入が安定しないのはすごくストレスだったみたいで、父親と私に対してストレスのはけ口を向けた、というキッカケです。異常なヒステリーですね」
母親はつねにイライラし、容赦なく怒鳴り散らした。小学生だった石田さんは毎日、毎日、なにかしら理由をつけて怒鳴られた。母親の甲高い声を聞くだけで動悸が高まり、怯え、恐怖とストレスで家庭に安心できる場所がなくなった。
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