アメリカの株式市場は、10月初旬に上昇に転じた後、11月中旬まで株高が続いており、ダウ30種工業株など主要株価指数はいずれも史上最高値を更新した。
株高の主たる要因は、2つの政治的な不確実要因(イギリスのEU離脱/米中通商摩擦)への懸念が和らいだことだろう。すなわち、(1)10月末期限だった英国のEU離脱が延期となり、EUとの合意を伴う離脱が実現する見通しとなり、(2)米中通商協議において今後の首脳会談などでの合意に向けた歩み寄りがみられている。
関税引き下げが実現しても、期待外れの可能性
筆者の予想に反し、11月に入ってもなお後者の米中通商協議に関する報道がリスク資産変動の主たる材料となっている。これまでアメリカが突きつけた対中輸入品目の関税引き上げの一部について、関税を引き下げるとの観測報道が見られており、金融市場は今後のそうした展開をすでにある程度織り込んだように見える。
今後の米中協議を予想する十分な知見を、筆者は持ちあわせていない。だが、あえて言えば、すでに関税引き上げの対象となった輸入品について関税引き下げが実現しても、それは期待外れに終わる可能性が高いと見ている。仮に関税引き下げなどが実現しても、ごく一部の品目に限定されるだろうし、米中の経済覇権争いが長期的に続く状況は変わらないと考えている。
そして、最近のアメリカの政治情勢の変化が、対中政策の短期的な路線変更に影響していると筆者は考えている。2020年の大統領選挙を控え、トランプ政権の優先事項が変わっていることが、最近の米中通商協議の変化に影響したのではないか。
具体的には、大統領選挙のライバルとなる民主党の大統領候補として、本命とされたジョー・バイデン氏ではなく、エリザベス・ウォーレン氏が民主党大統領候補になる可能性が高まったことである。世論調査の支持率をみると、最近の盛り返しでバイデン氏が依然最有力候補であるが、Predictitによるオッズデータでは、ウォーレン氏がバイデン氏を上回っている。
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