今の株価は「米中部分合意」を過大評価している 実体経済や企業収益と株価の差がハンパない
日米など主要国の株価が年初来の高値を更新している。前回のコラム「株価が下落した時、個人投資家がとるべき行動」では、株価の勢いがつくことで、遅れて買いに入る投資家が増え、「たとえば日経平均株価が2万3000円を一時的に大きく超えるような展開もありうるだろう」と述べたが、そうした株価上昇が実現している。
「米中部分合意」の内容は、「株価急上昇」に見合うのか?
ただし一方で、高値波乱も生じている。その要因としては、米中通商交渉(部分合意)に関する思惑の振れが挙げられる。
そもそも、米中が部分的合意に至るのではないか、との観測は、8月下旬に「協議再開」が発表されてから盛り上がった。筆者は、その協議再開の先行きが「部分的であるとはいえ、合意に至る」、という展開を読み誤ったが、それ以上に、部分合意をこれほど大きく好感して、9~10月に日米等で勢いよく株価が上振れするということを、全く予想できなかった。
しかし、そこまで株価が上昇するのにふさわしい部分合意の内容であるかを、直近の状況を踏まえてみてみよう。諸報道やさまざまな現地情報から、現在の中国側の提案は、主に下記の4点だと推察される。
1 アメリカ産農産品の購入は増やすが、ドナルド・トランプ大統領が要求しているような、2年以内に年間400~500億ドルの輸入、というのは無理だ。来年以降、徐々に増やしていくにとどめたい(できれば、具体的な購入金額は明示したくない)。
2 元安誘導を意図的に行わない、という姿勢は、形だけ示すことは差し支えない。米中部分合意が成れば、自然に元高に進むだろうから、中国側として、実際に何かしなければならないわけではないだろう。その元高を受けて、アメリカは中国の「為替操作国」としての認定を外してほしい。
3「構造問題」(知的財産権の侵害、巨額の補助金、先端技術の移転強要)については、実質的に意味がない取り組みでお茶を濁すか、今回の部分合意以降の努力目標としたい(そして何もする気はない)。
4 中国からの輸入に対するアメリカの追加関税は、過去の分も含めて、できるだけ撤廃して欲しい。
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