今の株価は「米中部分合意」を過大評価している 実体経済や企業収益と株価の差がハンパない

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アメリカ経済に対しては、11月1日に発表された10月の雇用統計が予想より堅調だったことなどを理由に、輸出製造業が世界的に不振ななかで、個人消費関連の内需非製造業に対する期待が強いようだ。

しかし、その雇用統計から算出される、雇用者全員の週当たり総賃金は、前年比でみた伸びの鈍化が続いている。

消費者心理も、ミシガン大学の消費者態度指数で推し量ると、8月に大きく悪化して89.8に低下したところからみると、11月分(速報値)は95.7まで回復はしているが、直前ピークの今年5月(100.0)まで戻り切れていない。引き続き、アメリカの消費者の慎重な姿勢がにじみ出ている。

高値保ち合いが基調でも、株価は中期で天井圏か

一方、日本でも、依然として人手不足が言われてはいるが、有効求人倍率は昨年11月から今年4月まで1.63倍でピークを形成したあと、9月には1.57倍まで低下している。

過去は、日本の景気の山と有効求人倍率のピークがタイミングとしてほぼ一致することが多かったため、注意を要する。また、消費増税の影響は、「駆け込みが限定的だから大丈夫だ」と喧伝されているものの、10月以降の消費関連データを注視していく必要があるだろう。

さて、今週に限って国内株価動向を展望すると、マクロ経済指標の発表は内外でそれなりにあるものの、日米の企業決算発表は(日本ではまだある程度続くが)峠を越しており、決め手となる材料を欠いている。

米中通商交渉については、いつ誰が何を言い出すか(もしくは、どのような観測報道が流れるか)はわからず、予断を許さない。それを除けば、株高が引き起こしている強気心理の広がりや、運用競争上買わざるを得ない機関投資家の買いが入るなどで、高値保ち合いが基調となりそうだ。

そのため、今週の日経平均株価は、2万2900~2万3600円を予想する。ただし、中期的には株価は天井圏にある、との認識だ。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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