今の株価は「米中部分合意」を過大評価している 実体経済や企業収益と株価の差がハンパない

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市場の反応としては、足元の株価の上昇ピッチから考えると、トランプ大統領が部分合意に進むという展開を、すでに大きく評価していると考えられる(特に数値的にそれを測定できるわけではなく、最近の株価上昇の強さから言っているだけだ)。こうした見立てが正しければ、実際に部分合意が成立した場合、それを一段と好感して株価が上値を伸ばすという展開は、否定はできないが、それだけでは株価の上値余地は乏しいと言えよう。

むしろ、「次の好材料」を欠いた反落もありうると考える。かえって、政権内の強硬派の路線に大統領が復した場合(部分合意が流れるとか、あるいは部分合意しても関税政策に変更がないとか)の、株価への打ち返しの方が、大きいと懸念される。ただ、繰り返しになるが、部分合意の最終着地点は、良くも悪くも、きわめて予測しにくい。

ちなみに、米中首脳会談を行うとして、場所はどこになるのか、日程はどうなのかを、気にする論調が多い。しかし、米中間でやる気になれば、いくらでも場所や日程の設定は可能だし、場合によっては首脳会談なしで合意できないわけでもなかろう。12月15日の次の追加関税発動より部分合意が先か後かがポイントだ、という主張も目にするが、合意に向けての両国の意思が固ければ、とりあえず先行して12月の追加関税を凍結して、その後に部分合意、ということも可能だと考える。首脳会談の場所や日程の設定については、気にする必要はないだろう。

肝心なのは実体経済・企業収益と株価動向の乖離

そうした米中部分合意を巡る騒ぎは別として、やはり気にかかるのは、世界の実体経済・企業収益の悪化と、株価の堅調さの乖離だ。ほぼ発表が一巡した7~9月期の企業収益(4~9月累計ではなく、7~9月期のみ、1株当たり利益、ファクトセット集計)については、日本のTOPIX(東証一部)では、前年比20%減益での着地となりそうで、当初想定(10~15%の減益)に比べて不振だ。また米S&P500指数では、2.4%ほどの減益となっている。

「今でこそ企業収益は最悪だが、これから回復するに決まっている」という声も聞くが、これは株価が足元で上昇しているため、それを説明する理由としてひねり出されている感もある。

確かに、前述と同様のTOPIXベースでは、10~12月期は8日(金)時点においては、アナリスト見通しの平均値で5.3%減益にとどまると予想されている。7~9月期の20%よりも減益率が縮小することにはなるが、9月末時点での予想値であった2.5%からは下方修正されている。経済環境の悪化により、一段の下方修正がある可能性も否定できないだろう。

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