ウォーレン氏は、富裕層への大幅な増税など、かなり大胆な経済政策を主張しており、仮に彼女が民主党の大統領候補となれば、ドナルド・トランプ候補は同氏の経済政策を強く批判して優位に立つことを狙うだろう。
この場合、2017年以降の経済政策の実績をアピールするために、中国への通商圧力を和らげる対応が合理的になる。対中強硬姿勢よりも、経済成長重視の姿勢をよりアピールするということである。
また、トランプ大統領に勝てる可能性が高い候補と言われるバイデン氏を巡っては、ウクライナ問題が大統領弾劾に至るか否かとなっている。これにバイデン氏の息子の疑惑が絡んでいることは、民主党の大統領候補者選定プロセスを控えるバイデン氏に望ましくない。ウクライナ問題に関する大統領弾劾問題は、それに直面しているトランプ大統領の立場からみても、あまり痛手ではないと思われる。
バイデン氏なら再び対中強硬姿勢が強まる可能性も
今後、民主党の候補者選定でウォーレン人気が続くかは不明だが、仮に最終的にバイデン氏が民主党の大統領候補となる展開となれば、トランプ大統領の選挙戦略として、再び対中強硬姿勢が強まる可能性が高い。米中通商協議が2020年初にかけてどう動くかは、民主党の大統領候補を含めたアメリカの政治情勢が大きく左右するとみられる。
ところで、金融市場の日々の値動きだけを見ていると、米中通商協議の行方が、今後の株式市場の方向を決するようにも見える。しかし、筆者は仮に市場が期待している米中通商摩擦緩和が実現しても、それが経済全体に及ぼす影響は限定的とみている。この裏返しでもあるが、これまでの米中の関税引き上げがアメリカ経済全体に及ぼす影響も、また決定的に大きくないと考えている。
このため、筆者は今株式市場が一喜一憂している米中協議の行方には、強い関心を抱いていない。帰趨を正確に予想することが難しいこともあるが、仮に関税引き上げでアメリカ経済が減速しても、その景気減速への十分な政策対応を行っているか否かがより重要だからである。つまり、市場が一喜一憂する米中通商協議の行方よりも、関税引き上げを含めた各国の経済政策によって2020年の米中経済がどうなるかである。
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