これまでの米中の関税引き上げが、貿易やグローバル企業に及ぼす悪影響はむしろこれから強まるだろう。
筆者は2020年半ばまで、製造業を中心に米中経済の減速は続くと従来から予想している。そして、景気減速が続いていることはほぼ想定どおりだが、足元では予想以上に早く世界経済が底入れする兆しがみられ始めている。米中の関税引き上げは経済を減速させるがそれが総需要を抑制する影響は大きくはなく、総需要により影響するのは各国の金融財政政策と考えている。
実際に、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など、2019年に実現した各国の中央銀行による金融緩和の景気刺激下支え効果が強まっている。例えば、アメリカの住宅市場が回復しており、中国では財政政策の効果などで建設・住宅投資が支えとなり成長率減速が緩やかにとどまっているとみられる。
日本除く主要国の金融・財政政策が効果を発揮
筆者は、10月31日のコラム「『今後も株高が続く可能性は低い』と考える理由」でアメリカ株市場について慎重な見方を示す一方で、各国の金融緩和政策が経済成長率を高める可能性に言及した。最近の各国の経済指標を踏まえると、日本を除く主要国の金融・財政政策の効果によって、2020年早々には世界経済が底入れする可能性が高まっている。
最も効果があるのはFRBの大胆な金融緩和転換で、断続的な利下げで政策金利は既に0.75%低下、さらに2018年から継続的に減らしてきたバランスシートを2020年にかけて再び大きく増やす姿勢を、10月に明確に打ち出した。
FRBのこれまでの金融緩和政策判断の背景には、トランプ政権が仕掛けた米中貿易戦争というリスクに備えるために、積極的な金融緩和が実現した側面が大きいだろう。是非については議論があるだろうが、金融政策への圧力を強めたことを含め、戦略的に中国を封じ込めるトランプ政権の経済政策運営が成功しつつある、と筆者は考えている。
FRBの金融緩和に加えてECBの量的金融緩和再開で、金融市場に幅広く流動性供給が増えて景気刺激的に作用する。さらに、国によって規模はまちまちではあるが、米欧では総じて拡張的な財政政策が実現している。日本を除く拡張財政と金融緩和のポリシーミックスが、2020年の世界経済底入れ時期を前倒しさせると予想する。
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