第2回 エコライフと団塊世代

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ドイツ団塊世代の社会的影響

環境政党が20世紀を特徴づけるものとすれば、左派政党は産業革命に端を発した19世紀の労働運動がベースだ。今日のドイツ社民党がその系譜であるが、今でもどことなく労働運動のDNAのようなものを感じられることがある。そういう政党カルチャーのようなところから見ると、緑の党は68年世代と呼ばれる世代の影響が大きい。

68年世代は1968年当時青年だった世代で、日本の団塊世代を重ねると比較的イメージしやすい。1940~50年生まれの学生や中間・高学歴層だった当時の彼らは反権威的な志向が強く、イデオロギーをもとに理想を語り、草の根型のデモクラシーをすすめた。
 70年代にドイツでは反核平和、人権、フェミニズム、それから外国人や同性愛者といったマイノリティの権利の拡大などが進んだのはこの世代の影響といえるだろう。文化面でいえば、ヒッピーカルチャーやビートルズやローリング・ストーンズなどのロックなどの洗礼を受けた世代だ。

世代間対立として捉えると、この世代の両親は消極的にせよナチスに追従している。これに異議を申し立てた世代でもあった。またイデオロギーに基づき、コミューンを作るために共同生活をした。

外務大臣も務めたヨシュカ・フィッシャー氏。68年世代の代表格

1998年に連立与党になった当時、外務大臣として大人気だったヨシュカ・フィッシャーなどは代表的な68年世代の一人だ。元々革命家で、タクシーの運転手やポルノの翻訳で糊口をしのいでいたこともある。外務大臣任期中は革命家時代の写真がメディアによく登場していた。1985年ヘッセン州の環境・エネルギー大臣に就任したとき白いスニーカーで宣誓を行った。それで「運動靴大臣」といわれた。
 環境大臣なども歴任したユルゲン・トリッティンの昔の写真を見ると、ヨレヨレのジャケットを羽織っていて、いかにもこの時代の活動家のような格好で記者会見に応じている。また緑の党が初めて議席をとった時に国会に登場した緑の議員たちはサンダル履き。周囲の度肝を抜いた。なんとも時代の空気が感じられる話だ。
 ともあれ、この世代の社会的影響はたいへん大きく、ドイツ社会をまさに変えてしまった。ヴァイツゼッカー大統領(1984-94年在任)はじめ、今年3月に就任したガウク大統領も68世代の功績を評価している。

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