世代間のギャップと連続性
緑の党が連立与党になったころ、ジャーナリストのフロリアン・イリエスが1965~75年生まれを「ゴルフ世代」と命名して68年世代との違いを描ききった。
「ゴルフ」とはフォルクス・ワーゲン社のゴルフである。68年世代はといえば「ビートル(旧型)」やフランス・シトロエン社のエンテ(あひる)に乗った。
ちなみにエンテはドイツにおける2CV(ドゥ・シェ・ヴォ)の愛称。いずれの自動車もこのジェネレーションと相性のいい自動車だった。
ところが「ゴルフ世代」たちが初めて買った自動車はビートルやエンテとは違って、スピードとパワーのある「ゴルフ」である。この世代の特徴は無駄な「闘い」をせずソツがなく、ブランドものにも躊躇がない。ドイツ人はケチといわれるが、彼らは「いいものが高いのは当然」という消費哲学を持つ。68年世代は自動車が故障すると自分でボンネットをあけて中をいじっていたが、ゴルフ世代はポンと修理に出して専門家に任せてしまう。
イリエスはゴルフ世代と68年世代の間のサンドイッチ・ジェネレーションにも言及した。彼らにとって68世代は成功事例であり、影響は少なくない。緑の党が初めて議席をとった83年当時、青春時代の彼らは「緑の党」に投票した。
しかしながら、68年世代はやたらに「ナイン(Nein=No)」と異議を唱えて議論をふっかけ、実際、緑の党も反対ばかりの野党時代も長かった。だから当時の同党については全く評価しない人もいる。サンドイッチ世代はそんな68年世代の欠点もわかっており、現実を分析しながら、ある程度豊かな社会を維持し、それが自分のためだけではなく、子供や孫のためにと考える。
このように細かく見ていけばイリエスが描き出したように世代間の特徴も見いだせるが、一方で68年世代と若者の世代には連続性があるともいえる。というのも上の世代に対してアンチテーゼをつきだした68年世代は親世代と断絶があるが、反権威を強め、民主制を押し出し、ある意味大衆的ともいえる今日の市民社会を作ったからだ。
分かりやすくいえば、野外ロックイベントでは68年世代も20代の若者も一緒に楽しめる世代なのだ。そして、そのせいか、こんなこともおこっている。
欧米の家族といえば、核家族中心で子供は成人になると家を出ていくというのが相場だったが、最近は三世代で住むケースも増えてきているという。家族観に変化がおきているように見えるが、68年世代以降の連続性というところからいえば、サブカルチャーや価値観で共有できるところが多いために実現しているように思えてならない。
筆者の身近にも68年世代はいる。現在60代のこの時代の雰囲気を引き継ぐ人たちは自意識が強い。しかし反権威の裏返しかフランクで堅苦しさがない。逆にフランクすぎるためにルールなどに寛容すぎて、子供の見本になりにくいこともある。
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