確かに旅行に行くとき、女性はファッションに気を遣いますよね。自分の写真もたくさん撮りますし。それだけこだわりがあるのに、ガイドブックには選択肢がありませんでした。なので、持ってかわいい、おしゃれな旅行ガイドには必ずニーズがあると思いました。
『ことりっぷ』は、一見しただけでは旅行ガイドに見えないですし、地名も、実は本を開いて持ったときに、手で隠れる位置に書いてあります。そうすると「いかにも観光客」という感じが薄れ、自分のノートや手帳を見ている感じになりますよね。
総務から営業まで…社内中の女性を巻き込む
――いろいろな点で『ことりっぷ』は、これまでの旅行ガイドの王道と違うわけですね。社内を説得するのに苦労はありませんでしたか?
もう、本当に大変でした(笑)。企画を出した当初、特に社内で決定権を持つような男性陣に、『ことりっぷ』ならではのかわいらしさが全然伝わらず、「旅行ガイドに見えない」とか「地味で目立たない」など、さんざんな言われようでした。
こうなるともう、自分ひとりの力ではどうすることもできません。そこで、編集部員だけでなく、社内中の女性社員の力を借りられないかと考えました。
いくつか案がある中から表紙デザインを決める際には、総務や営業など、社内のさまざまな部門で働く女性に、「今日、お昼に会議室で投票をやっているので、参加してください!」と一斉メールを送り、選定に協力してもらいました。
すると、私たちが思っていたとおり、現在の和柄モチーフの表紙が一番人気だったのです。その結果を持って、「これだけ支持されているのだから、きっと売れます!」と、役員を説得しました。協力してくれた女性社員から伝わって、ほかの部署で『ことりっぷ』が話題に上るようになったのも、大きな後押しとなりました。
――そもそも、なぜそこまで、本の“見た目”にこだわったのでしょうか。
旅行ガイドの商品としての寿命は、実はせいぜい3~4年くらいで、次々に新しいシリーズが立ち上がります。創刊しては、3年経ずになくなってしまうなんてと、私にとってはとても残念でした。
当社は地図作りから始まっているので、物件データとか地図の正確性に関しては、他社に負けない態勢があると思っています。編集部も一生懸命中身を作り込んでいるのに、なぜ短命なのかと疑問でした。
自分で立ち上げるシリーズはそうしたくないと思い、実際に本屋の店頭に立って顧客を観察すると、いろいろなことがわかりました。
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