日本人は豪雨災害頻発の未来から逃れられない

どうすれば深刻な事態に備えられるのか

――日本では、死者が5000人を超えた1959年の伊勢湾台風をきっかけに防災社会基盤の整備が進み、被害が激減した、といわれてきました。

でも手放しで喜べる状況にはありません。日本の風水害の人的被害と経済的損失の推移をみると、確かに、戦後すぐの巨大台風が頻発した時期に比べ、死者・行方不明者数は激減しました。ただ、経済的損失は、この40年余りはほぼ横ばいです。なぜかといえば、風水害に対して潜在的に脆弱な地域にも人が住み、資産が集積し、さまざまな生産活動がなされているからです。

もう一ついえるのは、1980年代から90年代にかけ、日本全体をみると強い雨が少なかった。それに加えてインフラも整備され、甚大な風水害の頻度が減ったので、心の準備を含め、社会の体系的な準備がかえって遅れた。21世紀に入り、風水害が増えて被害が相次いでいる背景には、そんな事情もあるのではないでしょうか。

1875〜2014年、日本における洪水による死者・行方不明者数と経済的損失(国土交通省のデータに基づき中村晋一郎・名古屋大准教授、沖教授らが作成)

風水害の被害は深刻、「まさか」が「またか」に

――日本の災害対策はこれまで、津波を含む地震対策を中心に進められてきました。

そうですね。怖いものは、<地震、雷、火事、おやじ>といわれ、風水害は入っていません。ですが、損害保険の支払額を見ると、風水害のほうが深刻です。損保協会のファクトブック2019によると、地震では多い順に、2011年の東日本大震災が1兆2833億円、2016年の熊本地震が3859億円、2018年の大阪北部地震が1072億円、歴代4番目が阪神・淡路大震災で783億円でした。

これに対し、風水害で支払いが最も多かったのは、関西空港が冠水し、閉鎖が続いた2018年の台風21号で1兆0678億円、しかし10番目の2004年の台風23号被害でも1380億円にもなっています。

――これからさらに、風水害は甚大、深刻になるのですか?

私は2018年の風水害を目の当たりにして、豪雨災害が<まさか>から<またか>になるだろう、と言ってきました。悲しい時代です。

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