日本人は豪雨災害頻発の未来から逃れられない どうすれば深刻な事態に備えられるのか

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――豪雨の頻度が高まるのは、地球温暖化のせいですか。

沖大幹(おき・たいかん)/洪水や渇水などグローバルな水循環と気候変動・持続可能な開発を研究。東京大学総長特別参与、教授、国連大学上級副学長。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書統括執筆責任者、国土審議会委員。著書に『水の未来ーグローバルリスクと日本』(岩波新書)など。54歳。(東京・文京区の東京大学で、撮影:河野博子)

人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が増加してきたため、産業革命前に比べ、地球全体の平均気温がすでに1度上昇しています。このため、豪雨がより激しく、頻度もより高くなっています。

地球温暖化がもたらす台風のいや〜な傾向

――気温が上がっているのは、人間活動による地球温暖化ではなく、ヒートアイランド現象であると耳にしたこともあります。

東京では20世紀の間に気温が約3度上昇していますが、そのうち地球温暖化による寄与分は約1度、残りの2度分はヒートアイランドの影響であるとされています。東京のような巨大都市では、地球温暖化による影響がヒートアイランドでさらに悪化しているのです。

――気温が上がると、豪雨が増えるのはなぜですか。

気温が上がると、大気中の水蒸気量も増加するからです。私の研究グループの内海信幸博士が日本でのアメダス観測値に基づき、豪雨の強度と日平均気温との関係を調べました。その結果、気温が高い日には短時間の強い雨が実際に降っていたことが明らかになっています。

――地球温暖化で、台風も増えているのですか。

気象庁気象研究所の見解は「台風全体の発生頻度はむしろ減るけれど、強い台風の数が増えて最大強度も高まる」というものです。2012年に発表された推計では、21世紀の終わりころにかけては、台風による地上付近の最大風速が10%弱増大することが示されています。

さらにいやな傾向もわかってきました。アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者が、台風など熱帯低気圧の移動速度が世界的に遅くなっているという研究結果を発表しています。これは観測に基づいたものですが、地球温暖化の将来予測でも、同様の傾向を示した研究があります。台風がゆっくり進んだり、停滞したりしたら最悪です。同じところに豪雨が降り続くことになるので、洪水や土砂災害のリスクが増します。

次ページ整備が進んで被害が激減したと思われたが…
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