人気沸騰のプロ野球チケット販売に起きる進化 ダイナミックプライシングの手法は浸透するか

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繁閑に応じて価格を変えるという手法はホテルやエアラインなどでは古くから導入されているが、プロ野球のチケットに導入したのは国内ではこれが初だった。

その後、フレックスプライス制はパ・リーグを中心に各球団に普及した。球団によって設けている価格の段階数は異なり、少ない球団で3段階、多い球団で5段階の価格設定となっている。

現在導入していないのは巨人、阪神、広島東洋カープ(広島)の3球団だけだ(一覧表参照)。

ただ、シーズン開始前に価格を決めてしまうフレックスプライスの場合、予測が100%当たるわけではない。

チームの成績が上向いたり、記録達成がかかった選手が現れるといった、シーズン途中で発生する事象を価格に織り込めないというデメリットがあった。

さらに、価格は1塁側S席、ライトスタンド指定席といったエリア単位で設定している。グラウンドに最も近い1列目でも10列目でも、出入りに便利な通路側でも通路から遠い内側の席でも、同一エリアでは価格差がなく、きめ細かさに欠ける。

これらの欠点をカバーすべく登場したのが、ダイナミックプライシングなのだ。

ソフトバンクと楽天が先行

ダイナミックプライシングは、発売からゲーム開催当日までの間、試合日程や座席種、対戦カードや購入者の嗜好などに関する過去データの分析結果をもとに、AIを使って試合ごとの需要予測を行い、需要に応じたチケット価格の変更を1席ごとに自動的に行う販売方法である。人気席種と不人気席種の販売速度の均等化を図ることで、ゲーム当日時点の完売を目指す。

アメリカ・メジャーリーグでは2009年にサンフランシスコ・ジャイアンツが導入したのを皮切りに、現在では北米4大プロスポーツすべてで用いられている販売手法だ。

日本のプロ野球界で先陣を切ったのは福岡ソフトバンクホークス(ソフトバンク)。

2016年シーズンから実験を開始し、翌2017年シーズンからAIを使った本格的な実証実験を1試合あたり100~200席程度の限定的な範囲で実施してきた。2019年シーズンは対象座種を大幅に増やし、対象席数も1試合あたり1500席に拡大した。

もっとも、本拠地ヤフオク!ドーム全体で4万席あるうちの1500席だけでの実施であるため、シーズンシートや招待席を除く一般席の大半はフレックスプライス制での販売だ。

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