人気沸騰のプロ野球チケット販売に起きる進化 ダイナミックプライシングの手法は浸透するか
これに対し、国内で初めてフレックスプライスを導入した楽天は、2017年シーズン途中から手動でのダイナミックプライシングを導入。翌2018年シーズンからはフレックスプライス制を廃止し、一般販売に回る全席を対象に、AIによる本格的なダイナミックプライシング制に移行した。
オリックスは昨シーズンも実験的にダイナミックプライシングでの販売を実施したが、対象は企画チケットの一部のみ。今年は1日限定ながら、シーズンシートと招待席を除く、一般販売に回る全席を対象として実施した。
AIを使う、全席が対象、1日単位で価格を変動させるといった点では楽天が先行しているが、楽天が100円に設定している価格の変動幅をオリックスでは1円単位にし、「日本初」をうたっている。
「上げる」効果より「下げる」効果
一般に、ダイナミックプライシングは繁忙期に価格をつり上げるために導入するもの、というイメージがあるが、実態は逆だ。
3球団とも導入の目的は「放置しておけば売れ残ったままで終わる席を、一体いくらまで下げたら買ってもらえるのかを模索する」ためだ。
福岡在住のソフトバンクファンの男性は、「今シーズンは普通なら発売と同時に売り切れて、まず手に入らない座席が対象座席になっていたり、タイミングによっては高額座席が大きく値下げされていたりすることに気づき、積極的にダイナミックプライシングを利用した」と話す。
楽天では、実際の価格を自前のシステムで算出しているが、ソフトバンクとオリックスは、三井物産・ヤフー・ぴあ・エイベックスの合弁会社であるダイナミックプラス社(以下DP社)に算出業務を委託している。
同社が使っているのは、世界最大のチケットプレイガイドであるチケットマスターが採用し、メジャーリーグでも使われているアメリカのニュースター社のシステムだ。
ダイナミックプライシングは「価格を下げる席、上げる席のミックス効果で、結果としてチケット収入を最大化する仕組み」(DP社の平田英人代表)だという。
例えば、販売状況が芳しくないSSS席の価格をさらに引き上げれば、SSS席を買う人はさらに減るが、SSS席を買うのをやめた人が価格を下げたS席やA席に誘導されれば、全体の平均単価は下がっても、販売数量の増加効果でトータルの販売収入が増える。
ほかにも普段外野席で観戦している人が、価格が下がった内野指定に誘導されれば、比較的完売率が高い外野席に余裕が生まれ、完売ゆえに外野席購入を諦めていたファンを取り込める。
「できるだけ多くの座種、価格帯で導入すると、あちこちで玉突きが起き、より効果が上がる」(平田代表)という。
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