東須磨小「教員イジメ」が他人事で済まないワケ なぜ大人のイジメは深刻化しているのか

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さらに恐ろしいのは、学生のような転校や卒業という即効性の高い対処法が使えないこと。また、大人だからこそ、「イジメられている自分を認めたくない」「イジメられていることを知られたら恥ずかしい」という気持ちが強く、精神的に病むまで我慢して追い詰められてしまうことです。

そんな大人のイジメを回避するための方法は、主に以下の3ステップ。

まずは、イジリの段階から「やめてください」と言う勇気を持つこと。逆に「笑って受け流す」と加害者側の心理的ハードルが下がり、イジメが増長する危険性があります。そもそも、イジメの加害者たちは相手のことが本当に憎いのではなく、イジメやすい対象を探している感が強いので、初期対応次第で過半数はシャットアウトできるでしょう。

次に、それでもイジメが始まってしまったら、軽いものであれば何もなかったかのように無視すること。加害者は被害者が怒ったり、悲しんだりする姿を見てイジメの効果を実感し、それが自分の力であるような錯覚を得て、さらなる攻撃を仕掛けてきます。

もしイジメの被害が大きくなってきたら、行為の日時や言動を記録し、ときには録音・録画するなど、証拠として蓄積しておくこと。そのうえで、中立の立場にある人や、深刻なときは法律の専門家などに助けを求めたいところです。

感情論で終わらせず、子どもたちに真の教育を

最後に東須磨小の話に戻すと、イジメの内容が暴行罪や強要罪などの刑事犯罪と言えるものである以上、「加害教師がけしからん」「校長と教育委員会がダメ」という感情論だけで終わらせてはいけないでしょう。

子どもたちへの影響を最優先に考えるのなら、臭い物にふたをするのではなく、「加害教師たちにどんな処分を下すのか」をしっかり見せるべきではないでしょうか。「有給休暇扱いで自宅謹慎中」という現在の暫定処分に疑問の声が上がる中、「一定期間を置いて別の学校で復帰」という事なかれ主義の対応では、真の教育にならないことは誰の目にも明らかです。

また、表側の顔だけを見る生徒や保護者たちが加害教師のイジメを見抜けないのは仕方がない一方、職員室や懇親の場などで裏の顔も見られる上司・同僚はイジメの実態をまったく知らなかったはずがありません。もはや被害教師や加害教師だけの問題ではなく、東須磨小に関わるすべての大人たちが今回のイジメ問題と真摯に向き合うことでしか、地に落ちた信頼を回復することは不可能なのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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