10周年のFlickr、復活の日は来るか? Flickrは100年写真を残せるか

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100年写真を残してくれるか?

スマートフォンにも高画素のカメラが搭載されるようになった。画像のサイズも、1枚当たり1MB程度だった時代は終わり、3~4MB、あるいはそれ以上に膨らんでいる。ビデオを撮影すれば、その容量はさらに上がっていく。しかしスマートフォン、たとえばiPhoneの保存領域は64GBから拡大していないし、ハードディスクより高速なフラッシュディスクを搭載するパソコンの記憶領域はむしろ小さくなった。

データは大きくなり、数も増え続ける。しかし保存領域は変わらないか小さくなる。こうした矛盾の中で、われわれは写真やビデオなどのデータを大量に作り出し、消費する時代を迎えている。たとえばフェイスブックは、ユーザーに特に写真の容量を意識させずに利用することができる。

また、最近気に入っているのがGoogle+の写真バックアップ機能で、スマートフォンで撮影したり取り込んだ写真を自動的にGoogle+にバックアップできる点が便利だ。1辺2048ピクセル以下であれば容量も無制限で、アップロードした写真は自動的に色味などを補正したり、連続写真からアニメーションを作ってくれたりする機能も楽しい。

Flickrも、無料ユーザーの保存容量を1TBに拡大し、iPhoneアプリにはGoogle+のような自動バックアップ機能を搭載し、スマートフォンに対応する利便性を図っている。その一方で、息を飲んでシャッターを押し、その中から厳選した写真を公開するという用途のFlickrという場もまた、失いたくない存在と言える。

写真は100年前の情景も見ることができる。ではデジタルのデータとして残された写真は、今後100年間残し続けることはできるだろうか。スピードの速いシリコンバレーで10年ですら長いのに、100年という期間を意識している企業は珍しく、「100年続く企業」を標榜するエバーノートは非常に奇特な企業といえる。

Flickrはモバイル化のトレンドをうまくとらえなかったが、Flickrらしい良質な写真の共有とコミュニケーションは、昔と変わらず保ってきた。100年写真を残し続けてくれる企業としての歩みを始めたとするなら、あと50年は写真を託し続けてみようと思う。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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