10周年のFlickr、復活の日は来るか? Flickrは100年写真を残せるか
ヤフーによる買収と、逃したモバイルへの気づき
2005年3月、Flickrは米国ヤフーに買収され、米国のヤフーIDを持っているユーザーは写真サービスとしてFlickrを利用できるようになった。買収前の有料会員は年間約5000円だったが、半額の約2500円に減らされ、無制限に写真をアップロードすることができるようになるなど、大きな資金とインフラを生かした会員サービスへと強化された。
その後、Flickrにはビデオ機能が追加されたり、オンラインで写真編集を行う機能を取り入れたり、写真の版権販売を行う機能と接続するなど、プロからカジュアルユースまで、幅広い人々が写真を公開し、共有し、またブログなどに簡単に活用できる仕組みを楽しんできた。写真という不変性の高いテーマだからこそ、長く継続してきているのだろう。
しかしFlickrは、転機をひとつ見逃していたかもしれない。
それは2011年夏に、Flickrで最も人気のあるカメラがiPhone 4になったことだった。それまではNikon D90などの一眼レフカメラがトップだったが、ここでスマートフォンがトップとなり、その後、現在に至るまで、ずっとiPhoneがトップのカメラになっているのだ(参考:https://www.flickr.com/cameras)。
これまでハイエンドなカメラのどんな大きい画像でもアップロードして保存でき、手軽に共有できるというハイクオリティさに照準を合わせていた。しかしiPhoneがトップのカメラになったということは、撮影機材そのものがより身近で、撮影者も撮影枚数も圧倒的に増える時代を迎えることの予兆であり、Flickrはその変化の兆しをつかんでいたのだ。
Flickrはすでに2009年にiPhoneアプリをリリースしていたが、写真の楽しみ方そのものを変化させるアプリではなく、iPhoneで撮影した写真をアップロードしたり、Flickrにある質の高い写真をiPhoneで楽しむためのツールとなっていた。実際、現在でもたくさんの写真をまとめてアップロードするには、サードパーティのアプリのほうがアップロードには便利だ。
Flickrはカメラランキングの異変に気づいていながら、モバイルシフトをしなかった。もちろん、既存ユーザーがそうしたサービス転換を望むか?と聞かれると、当時、ユーザーだった筆者からしてもあまり大きなピボットはして欲しくなかったというのが本音だ。裏を返せば、有料ユーザーを続けていることから、筆者にとって「現在もなお、代わりがないサービスだった」ということになる。
しかし、トレンドの流れは止まらなかった。2010年に登場したInstagramは、iPhoneで最も人気のあるカメラアプリへと成長した。Flickrのように4000ピクセルや5000ピクセルの写真ではなく、当初は600ピクセルあまりの正方形の写真。そしてフィルターをかけて仕上げるという、昔のインスタントカメラの雰囲気と身近さで急速に成長している。
Instagramはニュースなどでも引用されるソーシャルメディアの中心に躍り出ているが、Flickrのモバイルシフトがうまく進んでいたら、現在の「Instagramする」(正方形でフィルターがいい感じにかかった写真を共有する)という動詞は「Flickrする」と言われていたかもしれない。
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