大阪で鍛えた「車いすの社長」の堅実なビジネス 障害者から見るユニバーサルデザインの真髄
垣内:子どもたちはもう、慣れているんですよ。テレビではパラリンピック、アニメや漫画でも、障害のある方のキャラクターも増えています。だから慣れているのは子どもたちであって、まだ何らかの抵抗を持っているのは大人なんだろうなっていうところですね。
真山:そうすると、今の若い人たちが将来経営者になったら、すでに障害者に慣れているので、垣内さんたちの仕事がなくなりませんか。
垣内:(笑)。それが本当は理想だと思いますね。そういった形でフラットになって、ゆくゆくは、海外の障害のある人たちと仕事を作っていけるといいなあと思いますね。いま国内では障害のある人の割合が7%ですけど、海外では10%いますから。
障害者と健常者が働く場所を充実させる
渡邊:これから障害のある人を雇用する会社が増えていくと思いますが、雇用する側が気をつけることはどういうことでしょうか。
垣内:1つはオフィス環境のバリアフリーは、必須ではないということですね。どうしてもトイレなどをバリアフリーにしなければいけないということが先に立って、それができてからじゃないと障害者雇用ができない、となってしまっているために、いつまでたっても障害者雇用をしない企業さんが、非常に多いですね。
渡邊:「設備がないからうちでは無理」って思われてしまうんですね。
垣内:そうなんですよ。私の会社でも、東京も大阪も福岡も、車いす用のトイレはないですし、完璧なバリアフリーかって言ったら全然違うんです。でも、「なんとかなるだろう」とやってみたら、なんとかなっているんですよね。どちらかというと、やっぱりハードの部分よりも「ハート」の部分というところです。オフィス環境や設備的なところにばかりに意識を向けるのではなく、今できることはなんだろう、どういった準備ができるんだろうって、柔軟に考えてもらうことが重要なことじゃないかな、と思います。
真山:実際雇ってみて、その人が不便だったり、つらかったりすることに耳を傾けて、どう対応できるか考えることが大事ですね。
垣内:そうですね。それは面接時とかにちゃんと聞いておいたほうがいいですね。
渡邊:実際に雇用する側はそういうことを気にしすぎずに、まずは「一緒に働いてみる」ということですね。来年は東京でオリンピック・パラリンピックが開かれ、世界中から人が集まりますが、その中でユニバーサルデザインはますます重要になっていくと思いますか?
垣内:そうですね。例えばホテルでは、バリアフリーの部屋も足りないということはわかっています。客室が足りなければ、補えるところもありますよね。それが障害者雇用にも通じるところですが、ハードだけじゃなくハートの側面から、コミュニケーション、接客サービスからリカバーもできるだろうと思います。
日本の“おもてなし” を世界にアピールする大きな機会に、ユニバーサルデザインは欠かせません。ハード面だけではなく、ハートにおいても、今後ビジネスチャンスはますます増えていくと思います。世界はまだまだユニバーサルデザインが進んでいないので、私たちのノウハウを世界中に広めていきたいです。
(構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)
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