大阪で鍛えた「車いすの社長」の堅実なビジネス 障害者から見るユニバーサルデザインの真髄
垣内:大阪では「それでいくら儲かんねん?」という話になりますが、東京ではどちらかというと、「いいことにお金を払う」という考えが強い側面があります。大阪で創業してから4年間、ずっと赤字続きで鍛えられてからの、東京進出でした。大阪で鍛えてもらったことが生きて、いま東京、福岡は伸びてきていると思っています。
真山:「ユニバーサルデザインは儲かりまっせ!」という言葉に至るまでの苦労があり、それが今活かされているのですね。
垣内:大阪の皆さんに鍛えてもらったおかげですね。大阪は、ユニバーサルデザインに関して、世界的にみてもダントツに進んでいる場所なんです。
渡邊:え! そうなんですか?
大阪のバリアフリーは東京よりも進んでいる
垣内:例えば地下鉄のバリアフリー化率はフランス・パリが3%、イギリス・ロンドンが18%、アメリカ・ニューヨークが25%、対して東京が88%で、大阪はもう100%。3年前の時点で東京は7割くらいだったのが、東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて88%まで上がりましたが、実は大阪は3年前から100%です。そもそも1970年に開かれた前回の大阪万博が日本を変えました。あのときをきっかけに大阪でバリアフリーが進んだんです。
真山:そうだったんですね。
垣内:1970年に旧国鉄阪和線の我孫子町駅で駅として初めて点字ブロックが設置され、1980年の谷町線喜連瓜破駅で地下鉄の駅では初めてエレベーターが設置されました。
私は東京で生活していますが、大阪の移動のしやすさはやっぱりすごいです。あと、どこへ行っても誰かが世話を焼いてくれるっていうのも大きいですよね。ハードもハートも世界に誇れる町が大阪だと思っています。
真山:だからこそ、大阪では「そんなんで儲かんの?」って質問されるわけですね。
垣内:かつ大阪の人は率直に言ってくれるのが強いと思います。車いすに乗っていると、全国各地、基本的に客引きには合わないですよ。でもこの間、JR、近鉄、大阪メトロの3路線が乗り入れる大阪の鶴橋駅で降りて、焼肉店に行こうと社員と移動していたときに、客引きに「空いてますよ!」って声をかけられたんです。あ、やっぱり大阪は違うな、と思っていたら、さらに続けて「1階のテーブル席空いてますよ!」と言われました。
渡邊:具体的ですね。
垣内:2階、カウンター、座敷は無理ですから、これは本当にすごいなと。大阪しかないです、こんな声かけ。