大阪で鍛えた「車いすの社長」の堅実なビジネス 障害者から見るユニバーサルデザインの真髄

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真山:社会に貢献できるビジネスであり、障害を経験している側の視点で的確に提案でき、しかも儲かるというセットでプレゼンテーションができるのですね。

垣内:かつお金をかけすぎずに、投資はこれだけで十分です、というような形で寄り添ってご提案ができると思います。施設をユニバーサルデザインにすることは、障害者だけでなく、その家族や友人なども呼び込めますし、人件費も減らせます。

渡邊:「バリアフリーの設備があるここに、家族みんなで行こう」というシチュエーションは確かにありそうですが、人件費を減らせるとは?

ユニバーサルデザインにするメリット

垣内:障害者への対応は事業者にとってかなりの負担になります。「何をもってバリアフリーなのか?」がわからず、個別対応するしかないからです。それを楽にしてスムーズに対応できるようにすることが、コスト削減につながるんです。

小説家の真山仁氏は2017年から「ルソンの壷」の番組コメンテーターを務めている(写真:NHK大阪放送局)

真山:受け入れる側の態勢を整えることで、障害がある人に「来てよかった」と言われれば、働く人の気持ちも前向きに変わってきますね。バリアフリーを考える際、「いいことだからやらなければいけない」と理解する一方で、「ハードルが高く負担」と感じる両面がありますが、実はそんなに難しいことではなく、試して成功すると、大きなやりがいを感じられると思いました。でもやっぱり「キレイごとでしょ?」と言う人も多そうです。だからこそ、障害を抱えた人が説明をされたり、実際に現場でテストをされたりすることで、結果的に説得力のあるサービスを提供されているのでしょうね。

垣内:そのような説得力を、一個人に持たせないというところで、複数人の人の意見を聞いています。いま国内でのべ5000人の障害のある人たちに登録していただいて、随時アンケートを送受信できる仕組みを作っています。例えば、「この建物に行ってください」「この製品を使ってみてください」「ここの従業員の対応はどうでしたか?」などというようなことを聞いて、フィードバッグをもらい、PDCAを回しながらコストを掛けずに実現できていくと思っています。

真山:「ミライロのクライアントへ行ってください」ということですか?

垣内:そうです。予算をいただいて、うちに登録しているいろんな障害を持った方の総意をお届けします。また、障害のある人たちには、「アンケートに答えたら500円~」「調査に行ったら日給1万円~」ということで、彼らの仕事にもつなげていこうとしています。

真山:「ボランティア」ではなく、仕事として時間を費やしてもらった以上対価を払うようにしないと、続かないのでしょうね。

垣内:そうですね。西洋と比べると、日本は障害者のことに関して、「弱者に慈悲を」という考え方が強くないので、ある種ドライにビジネスの観点でお話ししたほうが通じやすいです。とくに大阪では、それが強かったと思います。

渡邊:ミライロは東京と福岡に支社がありますが、やはり大阪とは違いますか?

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