五輪選手村が建つ晴海、勝どきが迎える急変化 東京2020大会後、1万人のまちができあがる

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BRTができることで、都バスで勝どき駅を回って銀座や東京方面に出る人と、BRTで環状2号線を使って新橋に出る人に利用者を分散でき、晴海フラッグ付近の交通利便性向上にもつながるといえる。晴海フラッグのある晴海5丁目エリアにはBRT3カ所のバス停を設置し、平日のピーク時には1時間に6便のバス輸送が想定されている。

晴海フラッグは勝ちどき駅周辺のタワーマンションよりもやや安く購入することもでき、人気を呼んだ(編集部撮影)

BRTが円滑に運行するようになれば、勝どき駅一極集中の事態は避けられるだろう。とはいえ、バスというのは道路混雑次第では必ずしも予定どおりには動かないもの。

「やはり地下鉄のほうが計算できる」と考え、都営大江戸線を選ぶ人が増えれば、勝どき駅は現状を超える混雑になりかねない。はたして3~4年後にどうなっているのか。そこは未知数の部分もある。

BRTは東京五輪期間に1時間4便程度のペースでプレ運行されるが、それもスムーズに行くかどうかわからないところがある。五輪の間は選手や関係者の輸送を第一に考え、湾岸エリア各所で交通規制が行われる予定もあるからだ。

周辺のリコーやNECなどの大企業が本社の一部閉鎖や「リモートワーク(在宅勤務)」の推進を打ち出し、混雑緩和に協力する企業や団体は今後も出てくると見られるが、移動が避けられない人もいる。物流を含めて止めるわけにはいかない部分もある。道路は通常時以上の混み具合になるだろう。

鉄道にしても混雑は必須。東京都と東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が今年4月に発表した試算によれば、大会中に渋滞対策を講じたとしても、ゆりかもめは7日間で混雑率150%以上になるというデータが出ている。

昨年、組織委員会が出した「大会輸送影響度マップ」を見ても、大江戸線の勝どき、月島両駅は7月末の通勤時間帯は通常以上の混雑になるという見通し。メイン会場の新国立競技場の真ん前にある国立競技場駅は歩行困難になる可能性も指摘されている。

大会後のビジョンを今のうちから持つことが重要だ

大会主催者側にしてみれば、今は「五輪・パラ期間にどうやって大挙して訪れる人々をさばくか」が最優先課題で、その先のことまでは具体的ビジョンを持てないのが現状だろう。

その事情もよく理解できるが、やはり選手村の跡地に巨大な町ができるという厳然たる事実はある。それを再認識したうえで、どんな街づくりが必要なのか、今のうちから検証し、可能な限りの策を講じておくことが肝心だ。東京五輪・パラによって様変わりする晴海エリアの行く末が大いに気になる。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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