五輪選手村が建つ晴海、勝どきが迎える急変化 東京2020大会後、1万人のまちができあがる

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晴海エリア居住者にとって、とくに見逃せないのがアクセス問題だろう。もともとこのエリアは鉄道が走っていない「陸の孤島」。晴海フラッグも徒歩22分という都営大江戸線の勝どき駅が最寄り駅になっている。それ以外の公共交通機関は銀座エリアや東京駅とを結ぶ都バスだけになっている。銀座エリアなら自転車でも通勤圏内ではあるものの、鉄道駅が1つしかないのは、やはり心もとない。

勝どき駅周辺には数多くのタワーマンションが林立している(編集部撮影)

そもそも、勝どき駅も近年のタワーマンション建設ラッシュとオフィスビルの急増で乗降客数が右肩上がりになっている。

2000年の大江戸線開業当時の1日平均乗降客数は2万7734人だったが、2017年には10万人を突破。この数字は大江戸線内では六本木を上回り、新宿に次ぐ2位という状況だ。利用者は現在も増加の一途をたどっていて、駅のキャパシティーも限界に近いところまで来ている。

2018~2019年にかけてホーム一面の増設、出入り口の増設、コンコースの一体化など大規模改良工事が行われ、混雑緩和の一助になった模様だが、駅の処理能力をここから大幅に向上させるのは困難だ。

すでに勝どき駅周辺は朝のラッシュで大混雑

東京オリンピック・パラリンピック競技大会の期間(7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)にあたる時期である8月下旬に現地を訪れてみたが、朝9時の就業開始に合わせて勝どき駅に到着し、晴海方面のオフィスビルに向かうサラリーマンの数はすさまじいものがあった。夕方の終業時には逆の現象が起きているのだろう。そこに晴海フラッグの1万人超の新たな住民が加わったら……。想像するだけで頭の痛い状況になりそうだ。

勝どき駅から晴海トリトンスクエアなどオフィスに向かうビジネスマンたち。歩道もはみ出して多くの人が歩いている(編集部撮影)

1つの打開策として、東京都都市整備局が計画しているのが、バス高速輸送システム「BRT(バス・ラピッド・トランジット)」だ。

これは、晴海フラッグの最寄停留所がある晴海2丁目から新橋駅の間を約10分で結ぶ(選手村ルート)という新交通システムだ。2020年大会期間のプレ運行1次に向けて目下、湾岸エリアの重要幹線道路である環状2号線・地上部分の建設が進んでいて、バス停の設置も行われている。

本格運行が始まる2022年以降は、上記の選手村ルートのみならず、東京テレポート駅や東京ビッグサイトから新橋、虎ノ門へと至る「幹線ルート」、豊洲市場や豊洲駅を経由して新橋、虎ノ門に至る「晴海・豊洲ルート」、勝どき駅から新橋、虎ノ門へ出られる「勝どきルート」の合計4路線に増える。つまり、晴海フラッグ居住者や近隣住民は、新橋というJRの一大ターミナル駅にダイレクトにアクセスできるようになるのだ。

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