売り上げが半減しても黒字化できる体質に 永守重信・日本電産社長に聞く

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――新卒者採用を減らしますか。

「3弾ロケット」と表現して人員確保を考えています。第1弾は赤字にしないこと。第2弾は必ず夜明けが来るのやから、そのときに一挙に立ち上がれるような体制をつくることでそれがWPR。でも人員を極端に減らして新入社員もまったく採らないのでは、次に立ち上がるときの戦力が弱ってしまう。そこで、第3弾は10年先のことを考えて新入社員を採り続けることです。

09年春入社採用の新入社員は充足率が75%。レベルを落とさないようにと思うと、想定人数に対し100%採れなかった。ところが今回(10年春入社採用)は、1月末現在で応募者が去年の5倍。人事には、こういうときに150%、あるいは200%採らなあかん、と指示しています。賃金カットは利益が増えれば戻せますが、新入社員の優秀な人材はその時点で採用しなければ、二度と採れませんからね。

僕は新入社員の内定を取り消しにする経営者の気持ちがわからんな。特に高校生の内定取り消しは、その人の人生を狂わせますよ。僕やったら自分の全財産をなげうってでも、内定した学生は必ず採用する。内定を取り消してまで会社の利益を上げても仕方ないんやないかな。

 ――大幅減収の中で、10年度に売上高1兆円を目標とする中期経営計画は、下方修正が必要なのでは。

M&Aという手法もありますので、今の段階で目標を降ろすのはおかしい。ただ、経営環境は非常に厳しくなったとは感じています。

日本電産の売上高は中計目標の8合目まで来ていました。1兆円という頂上が目の前に見えていた状態でした。しかし、山頂を見上げたら猛吹雪で視界不良。それでもその頂上を目指すべきでしょうか。やはりここでは「ちょっと嵐がひどいな。7合目までいったん下山しよう。そこで温かいものを食べて気を取り直してから、もう一度頂上を目指そう」と考えたほうがいいのでしょう。1兆円の達成は、1年とか2年後とかにこだわる必要はありません。 

大事なのは、会社を買ってからのPMI

――昨年末、東洋電機製造に対する買収提案を取り下げ、富士電機ホールディングスの子会社への買収交渉も断念されましたね。

東洋電機については、よい会社だと思っていますが、先方の経営者の選択が少し誤っていたのではと思っています。

東洋電機の買収防衛策は見事なもので、だから当社はそのルールに沿って提案したわけです。ところが、相手は「なぜ突然来たのか。なぜ事前に話がなかったのか」と。いや、「事前に話をしてはいけない」と書いてある。買収提案の際は「こういう書類が必要」と書いてあるわけでしょう。提案後も先方からの質問に回答しましたが、それに対しても根掘り葉掘りの質問がどんどん来て、もう終わらへんわね。

僕はM&Aのプロセスの中で大事なのは、会社を買ってからのPMI(統合後の戦略)だと考えています。過去に買った会社はすべて赤字でしたが、後に再建したので価値が上がったわけです。買収後に企業価値を上げるには、先方の会社の社員や経営者の協力が不可欠なのです。その点で東洋電機の経営者は、われわれの考え方と違うのではないか……。だから買収交渉をいったん中止するのが正しいと判断したのです。

富士電機の子会社のケースはそれとは違って、収支がトントンぐらいならばバーンと買っていますよ。ところが、(基本合意した昨年10月以降に)ドスーンと赤字になってしまった。それを、そのままの金額で日本電産が買っていたらどのようになっていたかな。値段を安くしてくれたら、買ってもよかったですがね。

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