三つ子次男の「虐待死」に映る多胎児家庭の辛労 9月24日に控訴審判決、罪をどう償うべきか
東京都目黒区の船戸結愛ちゃんの虐待死事件で9月17日、母親の優里被告に懲役8年(求刑懲役11年)とする判決が下されたが、9月24日に予定される控訴審判決にも注目が集まっている。2018年に愛知県豊田市で発生した、三つ子育児の母親による0歳児の次男への暴行死事件の判決である。
2018年1月11日19時ごろ、愛知県豊田市に住む三つ子の母(当時29歳)が、自宅で生後11カ月の次男が泣きやまないことに腹を立て、床に2回たたきつけた。次男は病院に運ばれたが、同26日に脳損傷により亡くなった。母は殺人未遂容疑で逮捕された。
今年3月、名古屋地方裁判所岡崎支部で裁判員裁判の一審判決が出され、母は傷害致死罪で懲役3年6カ月を言い渡された。執行猶予はついておらず、母は控訴した。
健診で見られた虐待の兆候
『週刊東洋経済』では9月17日発売号で「子どもの命を守る」を特集。児童虐待や保育園事故、不慮の事故など、子どもの命を襲う危険について網羅的に検証している。その中で目黒区の虐待事件に加え、三つ子事件についてもレポートしている。
豊田市の事件では、母は2017年に不妊治療の末、三つ子を出産した。妊娠期には夫婦そろって市が主催する育児教室に通い、夫は半年間の育児休暇を取得するなど、育児に向き合おうとする様子がうかがえた。
しかし、三つ子の育児の負担は過酷だった。母は三つ子に対して毎日24回以上ミルクをあげており、1日1時間も眠れない日が続いた。そうした母を継続的に支えることができる人は、周囲にはいなかった。夫はおむつ替えに失敗したり、子どもをうまくあやせなかったりしたため、次第に頼ることができなくなったという。実家の両親も祖父母の介護に追われ、子の育児支援にまで手が回らなかった。
事件を防げたかもしれない場面もあった。2017年5月、三つ子の母は豊田市が実施した3~4カ月児健康診査の際、問診票の「子どもの口をふさいだ」という欄に印をつけたのだ。
また、長男の背中にはあざが見つかっていた。いずれも担当の保健師や医師が母に事情を聞いたものの、虐待と断定できる根拠はなく、行政が家庭に介入することはなかった。
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