三つ子次男の「虐待死」に映る多胎児家庭の辛労 9月24日に控訴審判決、罪をどう償うべきか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また健診の少し前に、豊田市の子ども家庭課の保健師が乳児を対象とした全戸訪問で三つ子家庭を訪れている。母が保健師に育児の不安を伝えると、保健師は一時的に子どもを預かる「ファミリー・サポート・センター」を紹介。しかし母は登録こそしたものの、実際の利用には至らなかった。一家はエレベーターのないアパートの4階の部屋に住んでおり、3人の子どもを抱えて階段を下り、事前の面談に行くことはなかった。結局育児の悩みは解消されず、母は次第に孤立していった。

豊田市の子ども家庭課課長は、「異変に気づき子どもを助けられていたら」と声を詰まらす。三つ子の母が行政のサービスを利用できず、育児で孤立していたことを、課長は事件後に知った。「ごく普通のお母さんに見えた」と言う。

悲劇を防ぐことはできなかったのか。今回の事件の経緯をたどると、双子や三つ子などを持つ家庭が抱えるリスクが浮かび上がる。

多胎児家庭に高いとされる虐待のリスク

一般的に、多胎児の家庭では虐待に発展するリスクが通常の単胎家庭より高いといわれる。日本多胎支援協会の調査によると、多胎家庭では虐待死の発生頻度が単胎家庭に比べ、4倍以上にもなるという。

その原因の一つには、育児負担の重さがあると考えられている。三つ子など多胎の育児では、昼夜を問わず子が交互に泣き続けるなどして親に負担がのしかかる。愛知県で多胎家庭を支援する一般社団法人「あいち多胎ネット」の日野紗里亜理事長は、自身も三つ子を育てている。「子どもが1歳頃になるまでは、ただ泣きわめいて私を困らせる存在としか思えませんでした。しかしつらくても、誰にも言うことが許されないような気がしていました」。

ヘルパーによる訪問や、家庭への研修などを通して多胎家庭を支えるNPO法人「ぎふ多胎ネット」の糸魚川誠子理事長も多胎家庭支援の現状をこう語る。「子育て中の母親は眠る時間もなく、心身がギリギリの状況です。ご家庭によっては毎日訪問し、様子を見るケースもあります」。

次ページ行政の支援は足りていたか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事