児童相談所職員にのしかかる何とも過重な負担 虐待対応で月100時間残業も、独自調査で判明
2018年に起こった目黒区の船戸結愛ちゃんの虐待死事件で9月17日、母親の優里被告に懲役8年(求刑懲役11年)とする判決が下された。この事件では児童相談所(児相)が2度の一時保護をしながら家に戻したことや、香川県から目黒区に引っ越した際、児相の間で十分に情報共有がされていなかったことなどが批判を浴びた。
児童虐待の死亡事件が起こるたび、真っ先に非難の矛先が向かうのが児相である。児相が会見を開き、所長が深々と頭を下げる光景はこれまで何度も繰り返されてきた。しかし、個々の児相を責めることが、虐待事件の解決につながるわけではない。背景には労働環境の構造的な問題が横たわっているからだ。
今児相で問題が深刻化しているのが、児童福祉司の人材不足だ。虐待の通告が入れば駆けつけたり、一時保護したりと、子どもや親と最前線の現場で関わる仕事である。
虐待通告件数の急増に増員が追いつかず
児童福祉司が足りない理由は、虐待対応件数の多さにある。急増する虐待通告件数に対して、その増員が追いついていないのだ。児童福祉司1人が対応する虐待対応件数は、日本では平均41件(2018年時点)と、アメリカの平均約20件の倍に上る。
相次ぐ虐待死事件を受けて国は2016年、児童福祉司を2019年度までに約550人増やす方針を打ち出した。さらに2018年の目黒虐待死事件を受け、再び増員目標数を掲げ、2022年度までに約2000人増やそうとしている。ただ増員で、どこまで児相の負担が緩和されるかは未知数だ。
そこで9月17日発売の『週刊東洋経済』では、児相を設置する全国69の自治体に対し情報公開請求やアンケートなどの独自調査を実施。児相の労働環境の実態解明を試みた。同号では、児童福祉司の月の時間外労働時間や、年間の有給休暇取得日数などの調査結果の一覧を掲載している。その一部を紹介する。