児童相談所職員にのしかかる何とも過重な負担 虐待対応で月100時間残業も、独自調査で判明

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今年改正された児童虐待防止法でも、このように一時保護などの「介入」と、家族の関係改善などの「支援」の担当職員を分けることが定められた。しかし、介入の担当者への業務過多が懸念されており、「職員数が少ない児相では担当を分けるのは不可能」(児相担当者)という声も上がっている。

また名古屋市のように24時間、正職員の宿直担当が虐待の通告に対応している児相がある一方、夜間や土日は当番職員が自宅で待機し、緊急時に対応するという児相も多い。

こうした自宅での待機時間は勤務時間には含まれない。「待機している時間も自由に使えない時間。本来なら勤務時間として認められるべきだ」と公務員の労働問題に詳しい岡田俊宏弁護士は話す。

時間外労働の上限規制が及ばず

児相は地方公務員の中でも消防署、警察署などと同様に、時間外労働をさせるのに労使間の「三六協定」を結ばなくてもよい例外的な職場だ。今年4月に施行された働き方改革関連法では、時間外労働の上限を原則月45時間とすることが定められたが、児相にはこうした規制が及ばない。

虐待死を防ぐ重要な役割を担うのが児相である。だがその現場が疲弊したままでは、役割を全うするのは容易ではないだろう。相次ぐ虐待事件の責任を児相だけに負わせていては問題の根本的な解決にはならない。“児相頼み”から脱却する新たな仕組みづくりが求められている。

『週刊東洋経済』9月21日号(9月17日発売)の特集は「子どもの命を守る」です。
井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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辻 麻梨子 ジャーナリスト

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つじ・まりこ / Mariko Tsuji

1996年生まれ。早稲田大学卒。非営利の報道機関「Tansa」で活動。現在はネット上で性的な画像が取引される被害についてシリーズ「誰が私を拡散したのか」を執筆している。

 

 

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