私はこのコラムで、好きな落語家のことを書いている。「東洋経済オンライン」という経済ニュースサイトでありながら「経済」の「け」にも触れていない。後ろめたく思っていたが、桂米團治の名刺には「株式会社米朝事務所 代表取締役社長」とあった。私は今回、企業経営者にも話を聞いているのだ。
桂米朝は、落語界でかつてない功績を残したが、それだけではなく芸能会社から独立し、自らと一門のマネージメントをする会社を興すという前代未聞の取り組みにも成功している。これが「米朝事務所」だ。米朝、枝雀、ざこば、南光ら人気落語家を擁し、企業として業績を上げてきた。
初代社長は、米朝と共に独立した元マネージャーがつとめた。米朝事務所の表の顔を米朝とすれば、裏の顔はこの初代社長。敏腕で、新戦略を次々と打ち出した。初代が引退した後、社内から後継社長が立ったが退任、次の社長をどうする、という話になった。
「僕は会社はもうええやろ、解散したら、言うたんですが、ざこばさんが“親不孝もん、継がなあかん”言うて。ご本人は“こんな会社辞めたるわ!”ってしょっちゅう言うてはったのに(笑)」
今がいちばん父・米朝と距離が近い
そこで、米團治が本名の「中川明」で代表取締役社長になった。経営者として会社を見ると、必ずしも順風満帆ではなかった。改めるところは改めた。米朝事務所の公式サイトもリニューアルした。
「2年目にして、ようやく経営のことがわかり始めてきました。“なにわあきんど塾”で経営のお話をさせていただいたりもしました」
父米朝が切り拓いた道を歩いてきた米團治だが、「経営の道」だけは父も歩いたことがない。この経験が落語にどう活きてくるのだろうか。
「去年12月に還暦を迎え、噺家生活40周年の独演会で全国巡業をしました。
7月7日の京都南座が最終日でしたが、姿は見えないけれども、なんかこう父にずっと守られているような気がしていたんです。死んで4年になるけど、今がいちばん親子の距離が近いかもしれません」
(文中敬称略)
1992年 大阪府民劇場賞奨励賞
2005年 兵庫県芸術賞奨励賞
2008年10月 五代目桂米團治を襲名。
2015年 尼崎市市民芸術賞
2016年6月、上方落語協会副会長に就任。
長唄「娘道成寺」から。「父米朝の出囃子でした。小米朝時代は『元禄花見踊』でした。父も使った『都囃子』で出ることもあります」(本人談)
〇持ちネタ
「稽古屋」「はてなの茶碗」「親子茶屋」「七段目」「たちぎれ線香」「動物園」「百年目」「代書」「地獄八景亡者戯」「景清」「蛸芝居」「青菜」「足上がり」「皿屋敷」「高津の富」「稽古屋」「愛宕山」「天狗裁き」「くしゃみ講釈」「猫の忠信」「持ちネタと言えるのは80くらいでしょうか。膨大な噺を高座にかけた米朝に比べれば足元にも及びません」(本人談)
・ホール落語 9月以降
2019.11.16(土)桂米團治独演会
朝日生命ホール(大阪)開演:13:00~(開場:12:30~)
2020.1.11(土)道新寄席 桂米團治独演会
道新ホール(札幌)開演:13:00~(開場:12:30~)
2020.1.12(日)桂米團治独演会
銀座ブロッサム(東京)開演:13:00~(開場:12:30~)
※その他、公演情報は米朝事務所のホームページ(URL:http://www.beicho.co.jp/)をご確認ください。
※公演情報に関するお問い合せは米朝事務所(TEL:06-6365-8281)へご連絡ください。
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