脳科学者が語る「直感をバカにしてはいけない」 自分の理性と感情はどれだけ信じられるのか
――話は変わりますが、恩蔵さんはお酒の席で失敗した経験はありますか?
もう、何度失敗したことか(笑)。普段から自分の感情をよく見つめていればいいのでしょうが、私はお酒が大好きなので、時々一緒に飲んでいる方が驚くようなキツイ本音を言ってしまうようです。心にモヤモヤがたまったときに飲んでしまうと、誰しも危険ですよね。
いい感情も悪い感情も見つめ、自分をバカにしない
――人はなぜお酒を飲むと失言をするのでしょうか。そのとき、脳はどのような状態になっているのかを教えてください。
アルコールを飲むと、脳は全体的に働きが悪くなります。なかでも弱い組織が2つあり、それが海馬と前頭葉です。
海馬は新しいことを覚えるために使われる組織です。アルコールの影響をとくに受けやすいため、たくさんお酒を飲むと海馬が一時的に働かなくなるため、目の前で起こった最新情報が覚えられなくなる。だから一晩経つと、飲んだ席で語られた内容を思い出せなくなるのです。
もう1つ影響を受けやすいのが、前頭葉です。前頭葉は「今はこういう内容を言わないほうがいい」と自分を制御する組織です。なのでアルコールによって前頭葉の働きが悪くなると、失言をしたり、普段言えずにため込んでいたことが口をついて出てきたりします。でも、アルコールを飲んでも、問題発言をしない方法があるんですよ(笑)。
――ぜひ、宴席で余計なことを言わなくなる方法を教えてください。
普段から自分の感情に付き合っておくことです。大人は「いい人でいなくては」という会社や社会、家庭の要請がありますよね。でも周りに合わせてばかりいると、自分の感情を無視して生きてしまいます。だから自分の感情を相手にわかってもらおうと、仕事でも家でも言い方をブラッシュアップして気持ちを小出しにしていく。するとアルコールの力を借りなくても、自分の感情はつねに整った状態でいることができます。
自分自身を抑えつけていると、アルコールによって前頭葉の働きが悪くなって、タガが外れてしまったり、「私はこんなに我慢をしているのに、あの人は私の気持ちがわからない」などと相手に冷たくなったりしてしまうんです。
――「いい人でいなくては」という社会の要請のお話がありましたが、確かに忙しい毎日の中で、ずっとハッピーでいるなんて無理ですよね?
できないですよね。ずっといい人、ずっとハッピーな人でいようとして、ネガティブな感情を無視していたら、苦しいと思います。自分の感情も、あらゆる出来事に対応して一生懸命労働しているんです。だから自分の中にあるいい感情も悪い感情も、しっかりと感じておく。いろいろな感情と付き合うことが大切だと思います。悪い感情だけだと、それこそトラブルを引き起こしてしまうかもしれませんから。
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