脳科学者が語る「直感をバカにしてはいけない」 自分の理性と感情はどれだけ信じられるのか

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あと自分の感情に気づくことは、先ほどの人間が自覚できない脈絡の話につながっていきます。「今、こう考えた理由」「今、私がこの場にいる理由」という理性は、意識にのぼった部分を点でつないで理由付けしています。でも本当の理由は、意識にのぼらない脈絡の部分にあるかもしれない。今、自分の意識している背後にある情報を、どれだけ自覚できるかが人間にとっては重要です。人間は想像以上にたくさんのことを感じて生きている。そうやって自らの感情一つひとつに目を向けるようになると、物事の見え方も少し変わってくると思います。

――会社や社会で揉まれて、自分の感情との付き合い方がよくわからないという方にアドバイスするとしたら、どんな方法がありますか?

安心してオススメできる方法と、必ずしもオススメできませんが効果的な方法の2通りがあります。

まずオススメできる方法は、普段自分が我慢していることに気づいてみる。それも1人の時間を作ってです。会社から帰ったら、1人で自分がどう感じていたかを振り返ってみるとよいでしょう。

もう1つの方法は、心の声を人前で口に出して言ってみるというものです。周りの人から「え?」と思われたり、時には人を傷つけたりすることもあるため、ちょっとリスキーなのですが、実際に試して失敗することで、次第に学習していきます。

自分のちょっとした本音を相手がどう受け取るかは、実際しゃべってみないとわからないところがありますよね。意外と受け入れてくれるかもしれないし、本気で怒られるかもしれない。でも失敗をしながら実践していくと、「ちょっと、やりづらいんだよね。別の方法はないかな?」などと、相手を傷つけずに自分の思いが素直に出せるマジックワードを生み出せるご褒美もあります。

――社会的地位のある方は、どちらの方法を行うにしてもちょっと難しいでしょうか。

そうですよね。社会的地位の高い方は、失敗ができない状況に追い込まれますし、実際の場で試すことは難しくなるのかもしれません。でも責任を負っている方こそ、感情的な無理を重ねていらっしゃるのではないか。自分で「こうだ!」と思い込んでいるロジックの世界から出て、生身の感情に向き合うと、新たなモノの見方ができるかもしれません。

脳は概略だけを捉えて記憶する癖がある

――記憶の話をしたいのですが、先ほどアルコールを飲むと海馬の働きが悪くなり、飲んだときの記憶を忘れてしまう話が出てきました。

お酒が脳のレセプターに作用して、海馬に問題を抱えたアルツハイマー型認知症の方などと同じように、新しい出来事が一時的に記憶しにくくなります。

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