自ら毛を抜く「抜毛症」に陥った女子大生の壮絶 自分を責め続け、気づけば入院する事態に

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なおこの頃、抜毛の症状は出たり治ったり。外出時はウィッグを着けるか、帽子をかぶっていたので、人目に触れて困るといったことはありませんでした。

面接に通るにはどうすればいいか? ほかにもいろいろと策を練りました。履歴書の書き方を変えたり、面接の受け答えを工夫したり。しかし今度は、ときどき採用はされるものの、体調がよくないこともあり、すぐ辞めさせられてしまうことが続くようになりました。

「みんなが肌でわかっているルールみたいなことが、わからないところがあって、とにかくいろんなことができなくて。職場に行くだけで精いっぱい、という感じでした。周りの人にもよく思われないし、そうすると自分で自分を責めてしまうんですよね。

でもそれだと、私に味方が1人もいないでしょう? こんなやり方はよくないな、と思って、もう『自分を責めるのはやめよう』と決めたんです。せめて私だけは、自分のいいところを見つけようと」

そこで小林さんが取り組んだのは、そのときどきで、1つでも自分の「いいところ」を探すことでした。

「職場をクビになっても、『笑顔であいさつできた』とか『2カ月行けた』とか。内容は何でもいいんです。そのうえで、『次の職場ではどうする』といった課題を必ず1個見つけることにしたんです。『前回は2カ月だったから、今度は3カ月頑張ろう』とか『前はここで失敗したから、次はこうしよう』とか」

「はいつくばるように働き」ながらも、生活を楽しむことも意識しました。1カ月働けたら、自分にちょっとしたご褒美を買ってあげる。休みの日には友達とお茶をする。少額ながらも、自分でお金を得られるようになったから可能になった楽しみでもありました。

25歳のとき、通院・服薬が終了します。小林さんの抜毛症の症状は、ついに、なくなっていました。

「仕事って面白い」と思えるようになるまで

めでたしめでたし……と思いきや。ここで小林さんは、大変なことに気づいてしまいました。それは、自分がまだ「幸せ」になっていない、ということです。

「それまでずっと、抜毛症が治って病院通いが終わったら、バラ色の人生になるんじゃないかと夢見ていたんですけれど。実際は病院通いがなくなっただけで、相変わらず不安定だし体調もよくないし、仕事も面白くない。結局、外側の条件だけいくら整っても、『幸せ』とは感じられないんだなと思って、すごくびっくりしたんですよ。何のために今まで頑張ってきたんだろう、って。

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