「アリこそ最強昆虫」と断言できる驚異の生態 「現代の南方熊楠」が危惧する生態系の未来

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そもそも現代では、わらぶきやかやぶきの建物が少なくなっていますが、普通の住宅の外壁に湿気でコケが生えたりしている場合、そこにヤネホソバが突発的に大発生することがあります。

そうした情報は駆除業者などのホームページにアップされるので、目を皿のようにして見ていましたが、そうした報告はたいてい「もうすでに駆除しました」という情報ばかりで、行ってみるとすでにいない……。

しかしその後、ヤネホソバの幼虫をひょんなことから入手できました。最近、虫の話をするために昆虫好きな住職のいる四国の寺に招かれたのですがその際、寺の境内に立つこけむした石灯籠の上にいるのを見つけました。

アリの巣の中に居候している「アリヅカコオロギ」とは

――つねに観察の目を光らせているわけですね。小松さんはいわゆるカブトムシやタガメのような、かっこいいスター昆虫ではなく、日頃あまり関心を持たれないけれども、身近な環境に生息している虫たちに注目されています。

例えばどこにでもいるアリ、そのアリの巣に住む奇妙な「アリヅカコオロギ」という種について小松さんの本を読むまで知りませんでした。どうしてそうした種に着目されるのでしょうか?

小松:アリヅカコオロギは、私たちに大変身近な「好蟻性昆虫(こうぎせいこんちゅう)」ですが、一般的な認知度はかなり低いかもしれません。アリヅカコオロギは世界で60種、日本にも10種くらいいるとされています。

しかし、彼らの生態はあまり研究されてきませんでした。なぜなら、害虫でも益虫でもない虫なので、まったく注目されてこなかったわけです。私がこうした好蟻性昆虫を専門としたのは、これまでちゃんと調べられてこなかった、正体がよくわからない、しかも人間がよく理解しようともしない生き物であるという点も多分にあります。

アリヅカコオロギは、宿主であるアリの巣の中に居候しているわずか3~4ミリ程度の米粒くらいの虫ですが、アリにとって別に何かいいことをしているわけではありません。「共生」というより、アリが巣の中にためこむ豊富な食料を巧妙に奪って生きています。

なぜアリの巣の中で生きられるかといえば、においによって仲間を判別するアリの習性を利用して、アリヅカコオロギは彼らアリに頻繁にタッチして素早く逃げ、そのにおいを自分につけているからです。でもそのにおいは揮発性なので、始終アリのにおいをくっつけ、アリの巣の中を逃げ回る必要があります。

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