「アリこそ最強昆虫」と断言できる驚異の生態

「現代の南方熊楠」が危惧する生態系の未来

虫たちから学ぶことは多くある、と語る小松貴氏。今、小松氏が注目している虫たちの世界について解説してもらった(写真:坂本佳子)  
8月1日に放送されたNHKスペシャル『香川照之の昆虫“やばいぜ!”』は、大きな反響を呼んだ。カマキリ先生こと俳優の香川照之氏が、人間が地球環境をひどく壊していること、世界で昆虫が激減していく状況をこのまま放置すれば、「昆虫の絶滅は人類の絶滅」につながるとまで言い切り、警鐘を鳴らした。
同じように日本からも数々の昆虫が消え、絶滅の危機に瀕している種が多いことをひっそりと訴える研究者がいる。
「現代の南方熊楠」とも呼ばれる小松貴氏だ。丹念かつ執念に満ちたフィールド観察は、同業者からも「彼ほど野外でさまざまな生き物を観察している日本人はいない」とさえ言われる。小松氏に、日本における昆虫をめぐる状況を聞いた。

多様さが減ってきている昆虫の世界

――『香川照之の昆虫“やばいぜ!”』では、100年後に昆虫が現在の1%にまで減ってしまうというような、驚愕のシミュレーション「昆虫カタストロフィ」も示されましたが、どう思われますか?

小松:こうした悲観的数値の是非はさておき、おおむね昆虫が減ってきていることには間違いありません。減る種は確実に個体数を減らしています。それにはいろんな理由があるのですが、農薬のみならず、植生の変化も挙げられます。

人間の手が適度に入った「里山的な環境」、開けた場所(草原)を好む昆虫は多いのですが、そうした虫のなかで絶滅危惧種に選定される種が多くいます。過疎化などで里山的な環境が保たれないと、やがて薄暗い森へと植生が変化していきますが、そうした環境では生きていけない虫たちです。

また、シカが増えすぎることで下草が軒並み食べられ、土壌がむき出しになってしまい、昆虫が暮らす環境が失われるケースも目立ちます。逆に、多くの種の昆虫にとっては生存不適な環境を、むしろ好む種もおり、それらは逆に勢力を伸ばしている向きがあります。

今の日本の昆虫の世界は種の多様さが減り、どこに行っても特定の同じような種ばかり目立つような雰囲気です。

――里山的な環境を好み、絶滅が危惧される昆虫でいま注目されている種はいますか?

小松:例えば、ヤネホソバという蛾(が)ですね。これはかつて日本で多く見られたかやぶき屋根に生える地衣類、コケを食べていたことが種名の由来とされています。幼虫は毒のある毛虫で、駆除の対象とされたりしますが、近年減少し、今は絶滅が危ぶまれるとして環境省のレッドリストにまで選定されています。

今年はこのヤネホソバを成虫まで育ててみようと思い、毛虫を手に入れようと頑張ったのですが、なかなか採集できない。

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