都営住宅の建て替え計画に住民が大反発、狭小化で介護ベットも置けない《特集・自治体荒廃》

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都営住宅の高齢化率は50%を超えており、単身者が5割。建て替え前の世帯人数を参考に建て替え後の間取り構成が決定されるため、単身者が多い住宅ほど、1DKの部屋の数が増えてしまう。入居基準のハードルの高さから若年単身者がなかなか入居できない現状では、1DK比率が高い都営住宅はますます高齢化が進むことになる。

高齢者ばかりの団地では、清掃活動や自治会活動を維持するのも難しい。隣近所との付き合いが減ることで、認知症がひどくなったり、孤独死の発見を遅らせるのではないかとの懸念も持ち上がっている。

入居収入基準変更で退去を求められる人も

団地の住民に不安を与える動きはもう一つある。

国土交通省の公営住宅法施行令の一部改正により、今年4月から入居条件がさらに厳しくなることだ。

入居収入基準が従来の「政令月収」20万円から15・8万円に引き下げられる。これによって、公営住宅の応募倍率は全国平均で半分以下に低下するとの試算もある。抽選倍率を下げることで、所得が少ない住宅困窮者を救済しようというのが政令改正の趣旨だが、都営住宅の場合、全世帯の約3割が収入超過となる。

収入超過世帯については近隣の同等の条件の民間賃貸住宅の家賃水準まで、都営住宅の家賃を段階的に引き上げていく。さらに、収入超過世帯は5~7年の猶予期間が過ぎた後、住宅の明け渡し努力義務が発生する。

だが、現在の基準ができた96年当時と比べ、高齢化とともに国民の所得格差は大幅に拡大している。問われるべきは、そうした時代の変化に国や都の住宅政策が対応できていないことにある。そして、低所得者でも入居できる良質の住宅が新たに建設されてこなかったことが問題を深刻にしている。東京都は経過措置として、家賃の値上げ実施を1年間延期する。だが、所得格差拡大を踏まえた新たな対応策は待ったなしだ。


(週刊東洋経済)
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