下水道が抱える巨額の借金、和歌山市では住民サービス低下の元凶に《特集・自治体荒廃》

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現在市内にある処理場は3カ所。下水の最終処理を行う処理場は、将来予想される処理能力を想定して造られる。しかし和歌山市の人口は82年をピークに減少傾向。人口増を前提にした計画が、結果として過大な投資につながってしまった。

さらに下水道管は引いたものの、一般家庭に接続されていないケースも目立つ。それが料金収入の伸び悩みの一因でもある。

背景にあるのが住民の高齢化だ。下水道管から一般家庭までの接続費用は、基本的に住民負担。しかし経済的に余裕のない高齢者のみの世帯が増え、接続が思うように進んでいない。この接続率(水洗化率)は73・1%と、中核市平均の90・9%に大きく後れを取っている。

一方で、市の借金は膨らみ続けている。和歌山市の下水道事業に関する地方債残高は、1071億円(06年度末)にも及ぶ。当時の使用料収入が20・8億円(同)だったことを考えると、使用料だけでは51年かからないと回収できない負債を抱えていることになる。

そして旧国鉄債務に匹敵する借金が残った

こうした窮状は、何も和歌山市に限ったことではない。06年度全国の下水道にかかわる地方債の総額はなんと「32・6兆円」。これは道路関係旧四公団の債務総額約40兆円と旧国鉄の債務総額約37兆円にも匹敵する規模の多額の借金だ。

今からさかのぼること、18年前。90年に閣議決定された「公共投資基本計画」において、91年からの10年間で総額430兆円の公共投資が実施されることが定められた。「当時は道路整備もピークを過ぎて、農地の基盤整備もほぼ終わっていた。だから『次は下水道で』との期待が高まった」(下水道事業に詳しい遠藤誠作・福島県三春町前財務課長)。

それを国が強力に後押しした。下水道の初期投資には国庫の補助があり、さらに起債の元利償還金に対しても半分近くが交付税措置される。そして90年代、地方の景気対策と称して、多くの自治体が下水道整備に走った。

だが、和歌山市に見られるような使用料収入の伸び悩みもあり、自治体には32・6兆円という巨額の負債だけが残った。ある市長は「政府は事業の採算性を無視して、単にこれを作れという考えだった。結局泥をかぶるのは地方。バラマキ行政の典型だ」と憤慨する。

自治体にとって、更新投資は大きな重荷だ。設備新設に比べ、改修に対しては国の補助率が低い。処理場などは強酸性の薬剤を利用しており、設備の老朽化は早いといわれる。もともと下水道は高度成長期以降に多く整備されており、今後老朽化が急速に進むことが想定されている。

08年4月、神奈川県川崎市の市道で最大2メートルの深さの陥没が発見された。その区間は縦横40メートルにも及んだ。これは主に下水発生源と排除先を結ぶ、管路施設の老朽化に起因した陥没だった。国土交通省によると、07年度道路陥没の発生件数は全国で約4700カ所。中でも管路施設の老朽化に起因した道路陥没の件数は、年々増加傾向にある。

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